コーダ あいのうた


 2022.12.13     ろうあの家族の中に健常者がひとり【コーダ あいのうた】

                     
コーダ あいのうた [ シアン・ヘダー ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
家族の中でひとりだけ健常者であることが負い目となる。両親と兄が共にろうあ者であるが、妹ひとりだけが健常者だ。漁師を営む家族の中で、手話で家族とその他の人々との通訳を行う。高校で、合唱部に入り自分に歌の才能があることがわかると、歌に熱中するのだが…。家族のだれもが娘の歌声を聞くことができないのがなんとも皮肉だ。バークリーへの進学をすすめられる娘なのだが…。

耳が聞こえない家族が漁師を続けるためには通訳が必要となる。さらには、家族の誰もが娘の歌声がすばらしいと理解できないことも困難な要因のひとつとなっている。ろうあであることについて、家族の誰もが気にしていない。そればかりか、生まれてきた子が健常者であることにショックを受けたりもする。

■ストーリー
豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から、“通訳"となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。

■感想
手話での会話を続けるということが、どれくらい生きづらいのか。序盤は家族全員がろうあ者であるため、常に手話で通訳しながらの生活を続ける娘の姿が描かれている。高校生となり、年頃ではあるが、漁師の父親と兄を手伝うことがかなり娘の負担になっている。

青春物語としては、合唱クラブで気になる男の子がおり、お互いに意識したりもする。この娘が実は歌の才能があり、合唱クラブの教師から目をかけられることになる。ろうあの家族の中で生活していると、自分の歌のうまさに気づかない場合があるのかもしれない。

ろうあ者の家族たちは底抜けに明るい。自分の境遇に悲しむのではなく人生を楽しもうとしている。家族たちのものおじしない雰囲気に健常者である娘が逆に引いてしまうような感じだ。物語に変化がでてくるのは、娘が合唱クラブの教師からバークリーへの進学をすすめられる場面からだ。

漁師としての仕事では経済的に苦しく、ろうあ者の通訳がいないというのが漁をする上での足かせとなる。ここで強烈なのは、娘を常に通訳として家族のそばにおいておくのか。それが果たしてできるのか。。。という流れだ

娘が夢に突き進むのを応援するのか、それとも家族のために犠牲になれと言うのか。家族の中でも熱量の違いがある。両親としても娘の歌の才能に疑問をもっているのが大きいのだろう。娘が発表会で歌い、観客が感動の涙を流しているのを見ると、両親も気持ちに変化が表れ始める。

耳が聞こえなくとも、周りの観客の表情を見ていれば、娘の歌の才能がどの程度なのかがわかるのだろう。お決まり通りの展開ではあるが、ろうあ者の中にひとりだけ健常者がいるというので疎外感を感じるという流れは意外だ。

高校生に家族のために犠牲になれというのは辛い。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp