昨日のパスタ (幻冬舎文庫) [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
小川糸のエッセイ集。時期的にはコロナ騒動がスタートしたころのエッセイとなっている。そんな時期に夫であるペンギンがベルリンへ行っており、そこに一緒に行くことになる作者。今度はベルリンから日本に入国できない危険性もある。コロナ渦での困惑と影響がエッセイから伺い知ることができる。それ以外にも、作者のエッセイではおなじみのゆりねが登場してくる。
このエッセイではゆりねは6歳になっている。人間の年齢になおすと作者と同じ程度ということだ。なので、ゆりね関連の話も落ち着いたエッセイとなっているが、そこに若い黒豆という犬が入ってくるとまた大騒ぎとなる。作者のエッセイを長く読んでいると、時間と共に変化しているのがよくわかる。
■ストーリー
ベルリンのアパートを引き払い、日本で暮らした一年は料理三昧の日々でした。春はそら豆ご飯を炊いたり、味噌を仕込んだり。梅雨には梅干しや新生姜を漬けて保存食作り。秋は塩とブランデーで栗をコトコト煮込み、年越しの準備は、出汁をたっぷり染み込ませたおでんと日本酒で。当たり前すぎて気がつかなかった大切なことを綴った人気エッセイ。
■感想
コロナ騒動の影響も大きいのだろう。作者の精神状態が不安定であったり、仕事かプライベートに問題があったのか、めずらしく弱音を吐いている場面がある。エッセイとしても料理を作っていても、自分の負の気持ちが料理に移ってしまっておいしくない、だとか。
ただ、いつもの作者のエッセイもある。地元の食材で手作りする。驚きなのは、いきつけのラーメン屋で麺だけを格安で売ってもらい、それを使ってタレを自作し冷やし中華を食べるというエッセイだ。ラーメン屋の太っ腹には驚きしかない。
あいかわらず料理のエッセイが多い。前半ではベルリンでの生活についてのエッセイであり、そこで食べる料理や手作りの品々。日本に帰ると、思いっきり日本食となる。特にお雑煮については母親が作っていた田舎の作り方をそのまま引き継いでいる。
日本人だからではないが、エッセイとして料理のシーンが描かれたとしても、ベルリンの料理よりも日本の料理の方がおいしそうに感じてしまう。コロナで何かと制限があり濃厚接触者や〇〇警察など、今考えると異常な出来事ばかりだが、それもエッセイで描かれている。
ゆりねのエッセイも当然ある。今回は黒豆という元気な若い雄犬を家で預かったので、それについての混乱が描かれている。ゆりねがおとなしいため、激しくやんちゃな黒豆に四苦八苦するエッセイだ。犬の個体差で飼いやすい飼いにくいがあるのだろう。
家の中をめちゃくちゃにされるほど、激しく暴れまわられると、さすがに犬を飼うのが嫌になってしまうかもしれない。家族の変化や生活の変化がそのままエッセイに現れており、作者の精神状態も如実に表れてくるエッセイだ。
これからも追いかけていく予定だ。