きこえる 


 2024.9.22      音が印象的なミステリアス短編集 【きこえる】


                     
きこえる [ 道尾秀介 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
音や声が聞こえてくることが印象的な物語が収録された短編集。短編の最後には実際にどんな音が流れていたのかをスマホやPCで聞くことができる。表題作でもある「聞こえる」は、昔よくあった死んだシンガーソングライターの曲に奇妙な声が入っているパターンだ。ミステリーを期待していたのだが、オカルトの要素が強い。実際に音を聞くとなんだか妙な恐怖感がわいてくる。

最初は気づかなかった音が、あとで聞こえてくるのは恐ろしい。デモテープというのは奇妙な恐ろしさがある。日常の音が印象的であり、中には少し意味の分からない物語もある。ミステリー的な展開を期待すると少しがっかりするかもしれない。不思議な物語を楽しむ作品だ。

■ストーリー
謎が「きこえて」くる。衝撃が、あなたの耳に直接届く。物語×音声。小説を立体的に体感する、まったく新しい「謎解き」の新体験型エンタメ、誕生!突然死んでしまったシンガーソングライターが残した「デモテープ」。家庭に問題を抱える少女の家の「生活音」。言えない過去を抱えた二人の男の「秘密の会話」。夫婦仲に悩む女性が親友に託した「最後の証拠」。古い納屋から見つかったレコーダーに残されていた「カセットテープ」。私たちの生活に欠かせない「音」。すべての謎を解く鍵は、ここにある。

■感想
「にんげん玉」は65歳の主人公がうさんくさいセミナーに参加し、その主催者が最後には自分の教え子だと分かる物語だ。詐欺まがいのセミナーであり、主催者が過去に自分の教え子だったと気づく。そして、同僚の女教師が殺された事件があり、その関係者だと気づく。

貧乏な主人公が元教え子を脅して金をだましとろうとする物語だ。過去の事件のことを知っていると教え子に告げて金を用意するよう脅迫する。その声を実際に聞くのは妙な恐ろしさがある。

「セミ」が最も印象的な作品かもしれない。少年の物語。転校した先で知り合った体の大きな少年セミ。頭が弱いので周りからバカにされているが、そのことに気づいていない。力は強いので怒らせるとやっかいだから、周りから適当にあしらわれているセミ。

少年の父親が事故死したことと、セミが実は大きく関係していた。それがわかるのは物語が後半になってから。それまでは、ひたすらセミと少年の交流が描かれている。少年の父親の事故に自分が関係していると知ったセミは…。ちょっと最後の意味がわからなかった。

「ハリガネムシ」は虐待を受けていると思われる女の子に盗聴器付きのUSBアダプターを渡した塾講師の物語だ。女の子には盗聴器付きだと知らせず、ただ塾講師の興味本位で盗聴をしていたのだが…。実は女の子の家庭は問題を抱えていた。

割と想定できる物語ではあるが、最後のところがちょっとよくわからなかった。再婚した新しい父親に虐待を受けていた女の子。最終的には父親は殺されてしまうのだが…。女の子は、USBアダプターに盗聴器が仕込まれていると知って行動したように思えてしまった。

きこえる、をテーマとした短編集だ。



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