決戦は日曜日


 2023.10.2    世襲議員の秘書は辛いよ【決戦は日曜日】

                     
決戦は日曜日 [ 窪田正孝 ]
評価:3

■ヒトコト感想
地方都市での世襲議員の悲哀を描いた作品。私設秘書の谷村は議員の川島が倒れ、その娘のゆみが立候補することになる。秘書としてゆみを助ける決断をした谷村なのだが…。ゆみが政治のしきたりを何も知らない自由奔放で言いたい放題の問題児だと判明する。現実にモデルはいないのだがろうが、様々な政治家の悪い部分を集めたようなキャラクターがゆみだ。

スピーチ原稿の各々(おのおの)をかくかくと読み続け、周りから失笑されたり、演説で子供を産まない夫婦に対して意味がないと言い切ったり。SNSやマスコミからすると格好のターゲットとなる存在だ。それでも強固な地盤があるため、ゆみは当選は確実と思われたのだが…。ゆみが世襲議員の在り方に疑問をもち落選しようと立ち回るのが特殊だ。

■ストーリー
とある地方都市。谷村勉はこの地に強い地盤を持ち当選を続ける衆議院議員・川島昌平の私設秘書。秘書として経験も積み中堅となり、仕事に特別熱い思いはないが暮らしていくには満足な仕事と思っていた。ところがある日、川島が病に倒れてしまう。そんなタイミングで衆議院が解散。

後継候補として白羽の矢が立ったのは、川島の娘・有美。谷村は有美の補佐役として業務にあたることになったが、自由奔放、世間知らず、だけど謎の熱意だけはある有美に振り回される日々…。でもまあ、父・川島の地盤は盤石。よほどのことがない限り当選は確実…だったのだが、政界に蔓延る古くからの慣習に納得できない有美はある行動を起こす――それは選挙に落ちること!前代未聞の選挙戦の行方は?

■感想
秘書たちの辛さが描かれている。バカな候補者を正しく矯正し教育するのは秘書の仕事だ。ゆみがあり得ない発言をした際に、周りから叱責されるのは谷村だ。ゆみに対しては誰も何も言わない。ゆみ本人は好きなことを言えて満足であり、多少炎上してもどこ吹く風というのが序盤の流れだ。

ダメな候補者を盛り立てる秘書ほど大変な仕事はない。各所への調整と根回し。そして、ありえないようなミスをする候補者。すべての責任が秘書になるのはあまりにも辛すぎる。

中盤では谷村はゆみに選挙の仕組みを暴露する。なぜゆみが候補者に選ばれたのか。倒れた父親の望みというのが建前だが、実際には操りやすいからと周りの議員が選んだだけ。それを知ったゆみは立候補を辞めると言い出すのだが…。

もはや逃げ出すこともできない。谷村たち秘書が妙にドライなのが印象的だ。ゆみが全てを暴露したとしても、ゆみは精神的に病んでいて変な言動をしたとマスコミをコントロールして報道させると言う。そして、ゆみの過去のスキャンダルを暴露するまで…。秘書の恐ろしさが垣間見える場面だ。

谷村は既存の慣習をぶち破ることを決意し、ゆみと共に選挙に落選するために様々な仕掛けを行う。あえて炎上する材料やスキャンダルをマスコミに流したりもする。ゆみがマスコミから叩かれ、落選するかと思いきや…。なぜかゆみは当選してしまう。

結局はこれが真実なのだろう。地盤の強さですべてが決まる。後援会がしっかりしていれば、候補者がどれだけダメでも当選してしまう。意図的に落選しようとしても当選してしまうというのは恐ろしい現実だ。

エキセントリックな候補者の演技を宮沢りえが好演している。



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