川っぺりムコリッタ スタンダード・エディション [ 松山ケンイチ ]
評価:3
■ヒトコト感想
何かしら訳ありな山田が、北陸の小さな町へ移住し小さな塩辛工場で働くことになる。古くて安いアパートのハイツムコリッタで生活するのだが…。隣人たちの特殊さが本作のメインだ。工場で働いた給料でささやかな幸せを満喫する。炊き立てごはんと工場の塩辛とみそ汁。風呂上りの牛乳。日々をただ漫然と過ごすだけの山田だが、隣人たちがそこに踏み込んでくる。
強烈なのはミニマリストの島田だ。庭で野菜を育てて自給自足をする。金がないのか、山田の部屋の風呂を借りたり、勝手に山田のごはんとみそ汁を食べたりとずうずうしい行動をとり続ける。息子とふたりで墓石の訪問販売する溝口や、ムコリッタの管理人など、個性豊かな人々と山田の交流が描かれる。
■ストーリー
山田(松山ケンイチ)は、北陸の小さな街で、小さな塩辛工場で働き口を見つけ、社長から紹介された「ハイツムコリッタ」という古い安アパートで暮らし始める。無一文に近い状態でやってきた山田のささやかな楽しみは、風呂上がりの良く冷えた牛乳と、炊き立ての白いごはん。ある日、隣の部屋の住人・島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと上がり込んできた日から、山田の静かな日々は一変する。
できるだけ人と関わらず、ひっそりと生きたいと思っていた山田だったが、夫を亡くした大家の南(満島ひかり)、息子と二人暮らしで墓石を販売する溝口(吉岡秀隆)といった、ハイツムコリッタの住人たちと関わりを持ってしまい…。図々しいけど、温かいアパートの住人たちに囲まれて、山田の心は少しずつほぐされていく―。
■感想
無一文で田舎町にたどり着いた山田。工場で働きながら狭いアパートで暮らす。序盤は給料が入るまで無一文で食べるものがなくひもじい思いをする山田。それを助けたのは隣人の島田で、自家製の野菜を差し入れされ、それにより命をつないだという感じだ。
工場ではただ黙々とイカをさばき、工場の歯車となる。給料でコメと味噌を買い、質素な食事をする。ただ、山田が黙々と食べるシーンではあるが、妙な魅力あがる。塩辛をおかずに食べるだけなのだが、妙においしそうに見えてくる。
隣人の島田のずうずうしさがすさまじい。汗をかいたが、風呂を修理する金がないとのことで山田の風呂を使おうとする。風呂上りに勝手に冷蔵庫を開けてビールを飲み、ごはんを食べてお替りまでする。自家製の野菜の漬物だけを差し入れし、食事をする。
助け合いなのか、ただずうずうしいだけなのか。島田のちょっとしたことを幸せとして感じる心の持ち方は山田に伝染していく。売れない墓石を黙々と売り続ける親子。当然売れるわけもないのだが、ひたすら訪問販売を続ける。奇妙な親子も隣人として登場してくる。
大家の南やそのほかの隣人たちが、ガツガツしていないのが良い。助け合いの精神なのか。溝口が偶然墓石を売ることに成功したことで、すき焼きを食べようとしていると、そこに島田たちがやってくる。島田に便乗して山田も参加している。さらには、においにつられて南の家族までもがやってくるのが良い。
最初は嫌がっていた溝口も、それを受け入れている。何もない田舎町で、それぞれ心にトラウマを抱えながら、ささやかな日常の幸せを感じる流れが良い。
妙な作品だ。