2023.10.16 パラレルワールドとはLINEでつながる 【彼女が言わなかったすべてのこと】
彼女が言わなかったすべてのこと [ 桜庭一樹 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
波間は偶然、同級生の中川くんと再会した。印象体な事件を経験し、その後、中川くんと連絡を取り合うのだが…。LINEでつながる中川くんの世界は波間の世界とは同じようで別のパラレルワールドだった。この手のパラレルワールド関連では、トランシーバーでつながるなんてのはあった。LINEなので、音声のやりとりや写真なども送れるのがポイントだろう。
中川くんの世界が今の現代で、コロナの問題や安倍首相の暗殺、オリンピック延期などが語られている。それらが起こらない世界が波間の世界ではあるのだが…。同じ人物でもまったく別の職業についているのが面白い。中川くんは波間の世界では有名なマンガ家だが、パラレルワールドでは普通のサラリーマンだったりする。
■ストーリー
小林波間32歳、前日偶然再会した同級生中川くんとは、どうやら別の東京を生きている。
■感想
波間は中川くんのパラレルワールドの世界に興味をもつ。何もない平和なそれまでの日常からすると、コロナで世界中が大騒ぎするというのは強烈な出来事なのだろう。客観的に見ても、非日常で緊急事態宣言での外出抑制なんてのはまさに戦争状態のような雰囲気すらある。
パラレルワールドにも波間はいるし、波間の世界にも中川くんはいる。驚きなのは、それぞれの世界で同じ人物が別の職業についていると言う部分だ。潜在的な才能が別の形で開花したということなのだろうか。
中川くんは波間の世界では有名な漫画家だが、パラレルワールドでは普通のサラリーマンだ。コロナの混乱に戸惑う中川くんに、こちらの世界ではマンガ家だよ、なんてことが言えない波間。そして、パラレルワールドでの波間がどんな生活をしているかは中川くんから聞けないのがポイントかもしれない。
波間はやっかいな病気にかかり、ホルモンを抑制する注射を10年間打ち続けなければならない。そのため、病気での問題が語られている。非常にこのあたりは暗く陰鬱な雰囲気となる記述が多い。
作者の何かしら心にある言葉を主人公の波間は代弁しているのだろう。女性ホルモンを抑制する治療を行うことで、異性からの性的干渉は無の状態となる。世間の余計なお世話や、病気に対する無理解などがとつとつと語られている。
世間に対する怒りや嫌味、そして苦しみが描かれている。ちょっと他者に対して攻撃的なように感じてしまった。波間は病気なので攻撃的なのか、それとも…。恐らくパラレルワールドの波間は同じ病気で死んでると思われる流れだ。
パラレルワールドがLINEでつながるのは新しいのだろう。
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