神々の山嶺


 2023.5.8    のっぺりとした絵柄が骨太な内容に合っている【神々の山嶺】

                     
神々の山嶺 豪華版 [ 夢枕獏 ]
評価:3

■ヒトコト感想
原作小説はすでに読んでいる。実写版の映画も見ている。原作はすばらしく、実写版はかなり端折られた箇所がありそれが気になった。アニメ化された本作。のっぺりとした絵は原作の雰囲気にあっている。羽生が単独で登頂し片腕を負傷した状態で歯を使って登るシーンがしっかりと描かれていたのはよかった。それ以外に関しては実写版ほどの臨場感がない。

やはりアニメで過酷な登山シーンが描かれたとしても実写には勝てない。いちおう、マロリーの遺品からミステリー的な要素があるが、それはオマケでしかない。羽生が冬季エベレストの南西壁無酸素単独登頂できるかといのがメインだろう。山に賭けた男たち。山以外は全てを捨てた男たちは一種異様なもののように見えてくる。

■ストーリー
「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」といういまだ未解決の謎。その謎が解明されれば歴史が変わることになる。カメラマンの深町誠はネパールで、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は、羽生を見つけ出してマロリーの謎を突き止めようと、羽生の人生を追い始める。やがて二人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる。

■感想
登山家マロリーの謎というよりは、孤高のクライマー羽生を追いかける写真家の深町の物語となっている。羽生がこれまでどのような登山家として生きてきたのか。羽生の調査という形で深町が調べる。衝撃的なのはやはり文太郎の件だ。

前振りとして飲み屋で、バディがロープで吊り下げられた状態の場合どうするのかという問いがあった。羽生は迷わずロープを斬ると断言する。ふたりとも死ぬのは無意味だということらしい。そして、定番どおり羽生と文太郎のコンビで山に登った際に文太郎が吊り下げられた状態となり。。。強烈な場面だ。

羽生は消息を絶った。ただ、冬季エベレストの南西壁無酸素単独登頂を目指すのは間違いないということで、深町はひたすら羽生を探し続ける。そもそもが、羽生を探す理由はマロリーのものと思われるカメラの中身が気になるからというのがある。

ただ、後半からはそんなことはどうでもよく、深町が羽生の登山を見守るという形となっている。少し疑問に思ったのは、羽生を追いかけるということは深町自身が南西壁の単独登頂を行うということだ。これもかなりハードルが高いはずだ。

原作小説に忠実な形となっている。実写映画は冬期登山の過酷さが映像から伝わってきた。本作はアニメということで、そのあたりはやはり実写には勝てない。おじさんたちしか登場しないアニメなのでリアル路線はあっているのだろう。のっぺりとしたアニメは骨太な登山作品にあっている。

写真家である深町は、多少のトレーニング描写はあるが、それにしても羽生にある程度ついていけるというのはかなり意外だ。写真家として過去にそれなりに過酷な登山を経験したということなのだろう。

強烈なインパクトのある登山アニメだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp