帰ってきたムッソリーニ


 2023.9.2    それでも能天気なイタリア人【帰ってきたムッソリーニ】

                     
帰ってきたムッソリーニ
評価:3.5

■ヒトコト感想
現在のイタリアにはムッソリーニが必要なのだろう。強烈に皮肉が利いた作品だ。独裁者のムッソリーニが現在のイタリアにタイムスリップしてきた。映像作家のカナレッティがムッソリーニをカメラに収め、テレビ番組で使おうとする。ムッソリーニの極端に偏った考え方を現代のイタリアで主張すると、周りはまるでギャグのようにとらえて大うけする。

移民の問題や差別、そして、イタリア国民の選挙に対する考え方。ムッソリーニは思ったことをそのまま主張しているが、周りはまるで新しい主張のようにとらえムッソリーニを称賛する。モノマネ俳優としてムッソリーニはチヤホヤされ、一躍時の人となる。オチとして、現代のイタリアの腑抜けぶりを揶揄するような終わり方なのが最高だ。

■ストーリー
独裁者ムッソリーニが現代ローマに生き返った! ?売れない映像作家カナレッティが、復活したムッソリーニを偶然カメラに収めたことから、一発逆転をかけたドキュメンタリー映画の制作を思い立つ。2人でイタリア全土を旅しながらの撮影旅行。ムッソリーニをそっくりさんだと思った若者が気軽にスマホを向けると戸惑いながらも撮影に応じ、またムッソリーニが市民の中に飛び込んで、不満はないか?と質問を投げかけると移民問題や政府に期待していない生の声があふれ出てくる。

その様子が動画サイトに投稿されると、再生回数はどんどん増えネットで大きく拡散されていく。ついには、テレビ番組「ムッソリーニ・ショー」に出演するまでに。そのカリスマ的な演説が人々の心をつかみ、高視聴率を叩き出すと、テレビ局の制作者たちは大喜び。こうして、かつての統帥(ドゥーチェ)は絶大な人気を集め、再び国を征服しようと野望を抱くが…。はたして、ムッソリーニが現代で権力を握ったらどうなるのか?

■感想
恐らくは、本作は現在のイタリア国民の腑抜け具合を揶揄するために作成されたのだろう。独裁者であり犯罪者であるムッソリーニが現代のイタリアにやってくるとどうなるのか。ムッソリーニは現代のイタリアの腑抜けぶりに激怒し、変わらない主張を続ける。

かなり過激な思想ではあるが、現代ではそこまではっきりと言う人がいないため、大うけとなる。バラエティ番組から始まり、討論番組までモノマネ俳優としてムッソリーニは一躍イタリア全体では時の人となる。

放送局内部での権力争いに巻き込まれるムッソリーニではあるが、その主張は変わらない。犬をムッソリーニが殺害する映像がリークされ、ムッソリーニはたちまち炎上するのだが…。それでも奇跡のように甦り、過激な思想をふりまく。

痴ほう症が進んだ老女がムッソリーニを見て、その犯罪者たる行為を次々と糾弾する。そこでムッソリーニはやはり悪で、何かしらオチがつくのかと思いきや…。ムッソリーニの独裁を許さないという勢力は、周りがウケることにより無いことになっている。

どのようなオチとするのかかなり興味深かったが…。ムッソリーニはそのまま現代に居座り、その人気ぶりは継続されている。やはり現代のイタリアは政治や移民などに文句は言うが、結局何もしようとしない。それを揶揄するために、ムッソリーニがやってきたらどう反応するかを試したかったのだろう。

実際に俳優がムッソリーニとして街中にでたとしても、イタリア国民は非難するわけでもなく、写真を撮り、手を振っている。イタリア国民が能天気のように描かれている。

強烈に皮肉が利いた作品だ。



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