十年後の恋 


 2024.11.27      アラフィフのシングルマザーの恋 【十年後の恋】


                     
十年後の恋 (集英社文庫(日本)) [ 辻仁成 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
パリで暮らすアラフィフでシングルマザーのマリエの物語。年上の実業家であるアンリに恋をしたマリエが描かれている。アンリが正体不明であり詐欺師のような雰囲気があるのがポイントだ。アンリを信じたいマリエと、見たくない現実。さらには物語はコロナ渦に突入していく。実際のパリのコロナ渦を経験した作者がそのものリアルを描いているのだろう。

アジア人に対する偏見がマリエを襲う。アンリが実体のないコンサルのような仕事であり羽振りが良いのが詐欺感を際立たせている。結論としてはアンリはどうだったのかは明言されていない。年齢的に肉体関係を求めるガツガツした恋愛ではない。どこかプラトニックに近い印象がある。

■ストーリー
パリで暮らすシングルマザーのマリエは、離婚から十年、映画製作の仕事と子育てに奔走してきた。二度と恋はしない――そう自分に言い聞かせていたが、謎めいた年上の実業家・アンリと出会い、急速に惹かれていく。しかし新型コロナウイルスが蔓延する中、アンリの友人から、彼がお金を返してくれないと相談される。アンリは一体何者なのか。疑念は膨らんでいき……。永遠の恋を描く、究極の恋愛小説。

■感想
シングルマザーのマリエ。最初の結婚で恋愛にはコリゴリと考えているのだが…。映画製作の仕事とふたりの娘の母親として奮闘するマリエ。ここでマリエは実業家であるアンリと出会う。60を超えたアンリとアラフィフのマリエ。

お互いいい感じになってはいるが、決定的なことはない。年齢を経ていると付き合うということがあいまいになるのかもしれない。アンリが仕事で若い女性を連れていると、それを見てマリエは嫉妬したりもする。この感じは若い男女にはない雰囲気かもしれない。

アンリの仕事は怪しい。様々な新規事業の話をしているが、実体がない。詐欺の典型かもしれない。ネットで調べても情報はでてこない。そんな状態でも恋は盲目なのか、マリエはアンリのことを信じている。映画関係者であるマリエとのつながりを作るアンリ。

マリエの気持ちはわかるが、周りからの情報で混乱する可能性もある。最終的にはマリエはアンリを信じることができず、アンリはマリエから離れていく。オチとしてアンリは逮捕されているが、最後までアンリは詐欺師だったのかは不明なまま終わっている。

パリを舞台にした本作。書かれた時期がコロナ渦だったのだろう。パリでのコロナ渦も合わせて描かれている。パリで緊急事態宣言が発生したりと、物語には直接大きな影響はないのだが、スパイスとなっている。魅力的だが、何をしているのかわからない存在。

詐欺師は相手をだますのが仕事なので、魅力的に見えるのは詐欺師のひとつの要素かもしれない。そう考えると、仮にアンリは詐欺のつもりはなくとも、結果として詐欺に近い行為になっているので逮捕されたのだろう。

マリエの右往左往する心境がポイントだ。



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