ジェニール織とか黄肉のメロンとか 


 2024.10.9      50代女たちの人間関係の複雑さ 【ジェニール織とか黄肉のメロンとか】


                     
シェニール織とか黄肉のメロンとか/江國香織
評価:3.5
江國香織おすすめランキング
■ヒトコト感想
学生時代に三人娘と呼ばれた女たちが主人公の本作。恐らくは50代半ばの年齢なのだろう。海外から日本へ帰ってきて自由を謳歌する理枝。母親との関係にギクシャクし、理枝を家に居候させている民子。義母の介護や息子たちの結婚にどぎまぎする早希。序盤を読んだ印象では30代の女の物語かと思ったが、50代だった。

作者の年齢に合わせて主役の年齢も変化しているのだろう。女性たちの裏の考え方というか、それぞれの立場の違いによる考え方など、非常にひりひりしてくる。女性同士の関係は難しいと思った。ちょっとした所作が気になり相手のことを嫌いになる。かと思うと、そういう人間だと理解しているので相手の無礼な態度も受け入れる。男からすると女性同士の友情であっても難しいように思えた。

■ストーリー
「会わずにいるあいだ、それぞれ全然べつな生活を送っているのに――。会うとたちまち昔の空気に戻る」――作家の民子は、母の薫と静かなふたり暮らし。そこに、大学からの友人・理枝が、イギリスでの仕事を辞めて帰国し、家が見つかるまで居候させてほしいとやってきた。民子と理枝と早希(夫とふたりの息子がいる主婦)は、学生時代「三人娘」と呼ばれていた大の仲良し。早速、三人で西麻布のビストロで、再会を祝しておいしい料理とワインを堪能しながら、おしゃべりに花が咲いて・・・・・・

■感想
50代の女性たちが主人公の物語。それぞれの周辺は様々に変化している。若いころのように恋愛や結婚に悩むというのではない。印象的なのは、女性たちは日々こんなにいろいろなことを考え、裏読みしながら相手との人間関係に神経をすり減らしているのかと驚いた。

自由気ままに海外生活から日本に帰ってきて民子の家に居候している理枝のみが自由を謳歌しているように思えた。民子の母親の薫に好かれており、恋人もできているが、弟の奥さんからは疎まれている。人間関係の機微が描かれている。

民子は独身であり80代の活発な母親薫と生活している。そこに理枝が転がり込んできて、薫と仲良くする。娘としてはどのような心境なのか。理枝が出て行ったときには、そのことを心底悲しんだりもする。身近にいる理枝のアグレッシブさと、母親を老人扱いすることへの違和感。

読んでいると30代と60代の母娘の会話かと思うほど若い印象がある。年齢的に民子が結婚を経験していないことを考える薫。女性ならでわの悩みや苦しみなども描かれている。

家族がおり平凡な主婦である早希が一番違和感がない。それでも息子が結婚するというと相手の女性のことについてあれこれ考えるなど、非常にやっかいな女性のような印象がある。義母の介護施設へ頻繁に見舞いに行くが夫はまったく行こうとしない。

平凡な主婦であっても当然ながら様々な悩みがある。独身の民子や理枝と比べるといくらか落ち着いてはいるが、それでも様々なめんどくさいことに対応している。おばちゃんたちの楽しいおしゃべりだと外からは見えるが、様々な思考をそれぞれがしていることに恐ろしくなった。

女だからこそ描ける物語なのだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp