いつか、一緒にパリに行こう パリ・ライフ・ブック / 辻仁成
評価:2.5
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■ヒトコト感想
作者がパリに住んでいたのは周知の事実。そんな作者がパリの魅力を語る。レストランやカフェ、美術館やフランス人の気質まで。勝手な印象では、フランス人はアジア人に対しての差別が激しい、というイメージがあったのだが作者からはとりたてて、そのあたりに特化した内容は描かれていない。
驚きなのは、パリの出産事情だ。パリではなんでも担当医がおり、まずはその担当医経由で様々な専門医の元に通う。特に出産のような医療であっても、特別ではないようだ。言葉の通じない国で出産をすることの大変さが伝わってきたと共に、できるだけフランス語を学んで話をするというスタンスは好感がもてた。強烈なインパクトはないのだが、パリへの入り口として読むのは良いだろう。
■ストーリー
芸術の、料理の、ファッションの、さらには恋の都と言えば、21世紀となった今でも、やはりパリ。’03年から当地に暮らす著者が、レストラン、カフェ、美術館等の情報から出産事情までをこっそり教えてくれる。けれども只のガイドではない。小説家の視線は、“花の都”に暮らす人々の姿を生き生きと描き出す。
■感想
パリといえば花の都というくらいだから、華やかな雰囲気を感じてしまう。パリで生活する上で、何を楽しむべきか。パリでのレストランには、ミシュランの星がかなり影響力があるようだ。作者の他作品ではミシュランの星に関する物語がある。
本作でも、必ずしもミシュランの星が2つだから1つ星の店よりも良いとは限らない。ただ、例外なく星が多いレストランは高級店だということだ。シェフは星の数で評価される面があり、星を失うことへのプレッシャーはすさまじいというのが印象に残った。
出産では作者の奥さんは中山美穂なので、辻仁成と中山美穂夫妻というネームバリューからすると、日本国内では大騒ぎになる可能性がある。だから、パリへ移住したのだろうと想像してしまった。産婆さんへ依頼し出産へと挑む。
無痛分娩を行うために麻酔を使うのだが、それについてのリスクも相当調べたらしい。日本ではあまりおすすめされない無痛分娩。日本ではリスクがあるとされていることも、パリでは推奨されたりもする。国が異なれば考え方も変わるというのがポイントなのだろう。
人間的にはっきりと表現するのがフランス人らしい。好き嫌いもそうだが、曖昧な話はしない。受け取る側からすると、はっきりと好き嫌いを言われるのは、差別を激しく受けているように感じるかもしれない。作中ではフレンドリーなフランス人ばかりが描かれているのだが、裏ではいろいろと厳しい対応をされていただろうと想像できる。
強烈なインパクトがあるのは間違いない。パリにまったく馴染みのない人にとっては、本作で情報を仕入れておくのもよいかもしれない。
パリ在住経験者の話は強烈だ。