2022.8.13 中島みゆきの歌が涙を誘う【糸】
糸 菅田将暉,小松菜奈
評価:3
■ヒトコト感想
中学時代に駆け落ちのようなことをした漣と葵。虐待を受けていた葵を助けるために漣が連れ出したのだが…。成長しふたりは再会する。基本的には再会してからも、漣と葵はそれぞれの人生を生きる。漣はチーズ工房で働き、コンテストにチーズを応募したりもする。葵はシンガポールでネイルサロン経営に成功したり。それぞれが順調な人生を歩んでいたのだが、漣の奥さんがガンで死ぬ。
葵は同僚に金を持ち逃げされサロンを閉店させる。それぞれが人生の辛い時期を過ごしたのちに再会する。それぞれがあまりの悲しみに、思わず泣きだしてしまうシーンがある。漣は妻が子供服を子供と選んでいるシーン。葵は会社がピンチとなり場末の日本食屋でかつ丼を食べるシーン。どちらも印象的なシーンだ。
■ストーリー
平成元年生まれの高橋漣(菅田将暉)と園田葵(小松菜奈)。北海道で育った二人は13歳の時に出会い、初めての恋をする。そんなある日、葵が突然姿を消した。養父からの虐待に耐えかねて、町から逃げ出したのだった。真相を知った漣は、必死の思いで葵を探し出し、駆け落ちを決行する。しかし幼い二人の逃避行は行く当てもなく、すぐに警察に保護されてしまう。その後、葵は、母親に連れられて北海道から移ることになった。
漣は葵を見送ることすらできないまま、二人は遠く引き離された…。それから8年後。地元のチーズ工房で働いていた漣は、友人の結婚式に訪れた東京で、葵との再会を果たす。北海道で生きていくことを決意した漣と、世界中を飛び回って自分を試したい葵。もうすでに二人は、それぞれ別の人生を歩み始めていたのだった。そして10年後、平成最後の年となる2019年。運命は、もう一度だけ、二人をめぐり逢わせようとしていた…
■感想
漣と葵の人生が描かれている。中学時代に駆け落ちするという壮絶な経験をしたふたり。知り合いの結婚式で再会するのだが…。ここで微妙な雰囲気になるというのはなんとなくわかる。中学時代の恋愛が大人になってまで続くのは難しいのだろう。
お互いが自分の人生を歩む。時代の流れと漣の周辺の変化も描かれている。中島みゆきの印象的な曲と共に、人生の悲哀が描かれている。漣はチーズ工房の先輩と結婚し幸せな生活を過ごしていたが、奥さんがガンとわかり、苦悩する。
漣と葵は対照的に描かれている。漣が地元で家庭的な幸せを手に入れたのとは異なり、葵はシンガポールでネイルサロンを経営し大成功する。どちらも幸せではあるが、幸せの種類が違う。ここから東日本大震災が起こり、そこから漣や葵の周辺も変化していく。
印象的なのは漣の奥さんがガンで余命僅かとなる場面だ。小さな子供を残し死ぬことの無念さ。げっそりと痩せていく様をただ隣で見るしかない漣の辛さ。残された者の悲しみが強烈に伝わってくる場面だ。
葵は夢破れ日本に帰国する。そして、漣はシングルファザーとして子供を育てながらチーズを作り続ける。辛い出来事があったあと、その傷が癒えてくると…。漣と葵が偶然地元で再会することになる。これからどうなるのかは描かれていない。
ただ、物語の流れとしては、最初に再会してから、お互いが気になってはいたが一歩踏み込めないため、そのままうやむやとなった形だろう。それぞれが人生の悲しみを味わう場面は強烈なインパクトがある。特に漣の悲しみは強烈だ。
中島みゆきの曲は悲しみを増大させる。
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