いまこの瞬間 愛しているということ 


 2023.10.10      フランス料理界の厳しさ 【いまこの瞬間 愛しているということ】

                     
いまこの瞬間愛しているということ / 辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
フランスの料理界を描いた作品。三ツ星シェフになることを悲願とするジェローム。ジェロームの店で働くハナ。それぞれの人生が語られており、紆余曲折ありジェロームとハナが付き合うことになる。ミシュランの星に対しての料理人の執念やマスコミの騒ぎ方が強烈に描かれている。

ハナの元カレが実はミシュランの審査員だった。情報が漏れることを恐れ、ハナにも伝えていなかった真実。物語の語りべは料理批評家でジェーロームやハナとも知り合いの男だ。なんとなく、これは作者自身を現しているのだろう。小説家から料理批評家へと職業は変化しているが、知り合いの恋愛トラブルについて物語として描いているというような感じかもしれない。

■ストーリー
ハナとジェロームの恋は、出逢いそのものが悲劇であったのかもしれない。ハナには恋人がいて、ジェロームには家庭があっただけでなく、「三つ星シェフ」になる、という命がけの夢があったのだから。困難な運命に立ち向かい、ふたりは感覚、感情、身体のすべてで愛し合った。たとえ終末が見えようとも。だからこそハナとジェロームの真実の恋は、誰かを愛することの尊さを教えてくれるのだ…愛することに臆病になっているあなたに贈るラブストーリー。

■感想
ハナは料理人を目指してフランスに行き、様々な店で修行してきた若い女性だ。元気で気持ちよく仕事をし、ミシュランの星を得るような店の厳しい労働環境にもしっかりと適応できていた。そんなハナが許されない恋をする。

序盤ではハナの仕事とジェロームの店が三ツ星を目指すために徹底的な管理で店が回っている様が描かれていた。序盤の描かれ方は、ジェロームに魅力があるようには思えない。仕事人間で冷酷で部下を駒のようにしか扱わない男というイメージしかない。

ハナとジェロームが付き合うことになる。きっかけはジェロームからのアプローチだ。ミシュランの三つ星を最短で手に入れることだけを考え仕事にまい進し続ける男。ミシュランの星の評価には、シェフのプライベートが加味されるのは驚きだ。

円満な家庭をもち精神的に安定したシェフがいなければ三ツ星はとれない。従業員と不倫しているなんてのはもってのほかだ。それを理解しつつも、ジェロームとハナは止まることができない。。強烈なのは、実はハナの元カレがミシュランの審査員でジェロームの店を審査する役割を果たしていた部分だ。

ハナが病気を発症する。SDSEによりハナの味覚はなくなり感情もなくなっていく。そして…。あまりにも悲しい結末だ。ジェロームの店で発症したということで、何かと世間の話題にもなってしまう。ジェロームが親身にハナの世話をするのだが…。

ラストが死の病というのも定番的ではあるのだが…。ミシュランの三つ星をとることの過酷さと、それを手に入れてからもハナの師匠が業績が振るわないことを苦に自殺するなど、強烈な展開がある。

料理界の厳しさを感じさせる作品だ。



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