ヒトラーのための虐殺会議


 2024.8.19    1100万人の虐殺ありきの会議【ヒトラーのための虐殺会議】


                     
ヒトラーのための虐殺会議 [ フィリップ・ホフマイヤー ]
評価:3

■ヒトコト感想
ドイツの要人たちが集まり、ユダヤ人の大量虐殺を決定する。この歴史的な出来事を会議の場であっさりと決めてしまう。ドイツの湖畔にある閑静な大邸宅でドイツの各事務次官やナチスの親衛隊が集まり最終決断をする。基本はユダヤ人の虐殺ありきで、どのようにしてそれを実行するかが描かれていく。

1100万のユダヤ人をどのようにして効率的に殺害するのか。それを淡々と相談している。ある者は自分たちの管理する領土にユダヤ人を送り込まれることを危惧し、ある者はひとりひとり射殺していてはきりがないだとか、殺害するドイツ兵の心理的な影響を考えたりもする。この恐ろしい計画を机上ですべて判断し、効率化の観点で決断するのは恐ろしさしか感じない。

■ストーリー
1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長官のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15名と秘書1名により開かれた会議。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味する。移送、強制収容と労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。

■感想
作中では、ほぼすべてひとつの屋敷内での物語となる。高級な車に乗って邸宅に下りてくるのは政府のお偉いさんと軍人たち。この場にはヒトラーはいないが、ヒトラーの意志を何より尊重する者たちが、ヒトラーの悲願を達成するために議論する。

ユダヤ人問題の最終的な解決という名の会合なのだが、実体はユダヤ人をすべて殺害するための計画を話し合っている。驚きなのは、ヨーロッパ中のユダヤ人をすべて虐殺するという計画に対して、だれもそのことについて拒否しないことだ。

すでにユダヤ人を殺害することは既定路線なのだろう。会議の場で話合われるのは、どのようにして効率的に実行するかと、ドイツ国民への影響ばかりだ。ユダヤ人とドイツ人のハーフの扱いをどうするだとか、様々な問題が発生する。

ユダヤ人をすべて虐殺することの大きな出来事について、根本的な話し合いはすでに終わっている段階だ。1100万人をどのように効率的に殺害するのか。銃殺では488日かかるということでありえないと否定されてしまうのだが…。

恐ろしい計画が淡々と話し合われ、そのまま承認されてしまう。しっかりと議事録をとり、決定事項の証拠を残す。ドイツ人らしい几帳面さもありながら、列車でユダヤ人たちを移動させ、そのままガス室に移動させる。途中でユダヤ人を収容する必要がなく効率化ということで賞賛されたりもする。

当たり前のように1100万人を殺害することを議論する。誰一人として非人道的だと叫ぶ者はいない。恐怖に支配され強制されているわけではないのが、より衝撃的だ。

強烈な作品だ。



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