2022.7.24 特殊能力をもつ三つ子の物語 【ヒトコブラクダ層ぜっと 上】
ヒトコブラクダ層ぜっと(上) [ 万城目学 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
不思議な作品だ。梵天、梵地、梵人の三つ子がおりなす物語。魂が抜け出るように、三秒だけ土の中や壁の向こうなどを見ることができる梵天。どんな言葉でも理解できてしまうスーパー通訳の梵地。三秒先が見える梵人。それぞれの特殊能力を生かし、泥棒を続けていたのだが…。本作が強烈なのは、後半の展開だ。謎の青い毛皮を着てライオンを連れた女の思うがままに操られ、ついにはイラクの砂漠で不思議な世界へと紛れこんでしまう。
上巻の段階ではこの不思議な世界の全容が判明しない。ヒトコブラクダ層という、恐竜の化石を掘ることから繋がるなんらかの世界なのだろう。特殊能力を操る三つ子が、奇妙な世界でどのような立ち回りをするのか。早く下巻を読んでみたくなる作品だ。
■ストーリー
ついに海を越えて世界へ!梵天、梵地、梵人(三つ子)。その特技は泥棒、恐竜化石発掘、メソポタミア、未来予知。彼らが向かった先(イラク)に待つものは!?貴金属泥棒で大金を手にした三つ子の前に、ライオンを連れた謎の女が現れたとき、彼らの運命は急転する。わけもわからず向かわされた砂漠の地で、三つ子が目撃する驚愕の超展開とは!?
■感想
三つ子の能力もそうだが、全体として謎が多い。なぜ三つ子はこの能力が使えるようになったのか。とてつもない権力をもっていると思われる謎の青い毛皮を着た女。その女に脅され自衛隊に入れられ、いつの間にかイラクに送られてしまう。
物語としてはその前段としてそれぞれの能力が様々な場所で有効に使えるということが描かれている。序盤で梵天が恐竜の化石に興味があると描かれているので、下巻では不思議な世界と化石が何かしら繋がりが見えてくるのだろう。
謎の青い毛皮を着た女が強烈だ。いつの間にか国の上層部に働きかけ、自衛隊に入れられた三つ子をイラクへと派遣する。そこでは、アメリカの海兵隊の指示のもとに砂漠のド真ん中に連れてこられてしまう。海兵隊の少佐ですら、青い毛皮の女が何者なのかわからない。
末端の兵士や少佐には何も知らされずただ指示されたことを実行するだけ。その中に三つ子も含まれており、まさに何も知らない状態のまま、ひたすら三つ子の能力で前にすすむ。まるでRPGのように次の展開が見えてくるのだが…。まったくその先どうなるかわからない。
本作の後半で砂漠の枯れたオアシスの木に地面に入り込んだロープが登場する。そこに梵天が覗きこんだ瞬間、空中から落下することになる。降り立つ場所はまさにこの世ではないと思われる奇妙な世界だった。海兵隊の兵士と自衛隊の兵士と三つ子が降り立つ場所は現代ではない。
まさにこれから何が起こるかわからない不思議な状況だ。ヒトコブラクダ層というのが何かわからない。この奇妙な状況というのが強烈な引きの強さがある。三つ子の能力がより発揮される展開になるのだろう。
下巻が非常に気になる流れだ。
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