2023.7.30 現実か?それとも架空の物語か?【鳩の撃退法】
鳩の撃退法 [ 藤原竜也 ]
評価:3
■ヒトコト感想
作中では小説家の津田が編集者へ小説作品を読ませることからスタートする。津田が書いた小説はフィクションなのか。後半では今の津田の境遇が、小説作品の中で登場してくる。となると、今までの内容はすべて実際に起きたことで、実在の人物ということになる。最終的には一家失踪事件の結末はどのようなものなのか。
津田が小説の中で結末を想像する。実際の結末は違うのかもしれないが、小説の中だけでも幸せな結末をと津田は考えたのだろう。物語の構成が秀逸だ。序盤では何のことかさっぱりわからないが、後半になるとすべての出来事が繋がっていく。偽札事件や謎の裏社会のドンの存在。結末はいかにも都合がよすぎるような流れではあるが、構成が秀逸なので気にならない。
■ストーリー
かつては直木賞も受賞した天才作家の津田伸一(藤原竜也)。津田はとあるバーで担当編集者の鳥飼なほみ(土屋太鳳)に、書き途中の新作小説を読ませていた。富山の小さな街で経験した“ある出来事"を元に書かれた津田の新作に心を躍らせる鳥飼だったが、話を聞けば聞くほど、どうにも小説の中だけの話とは思えない。
神隠しにあったとされる家族、津田の元に舞い込んだ大量のニセ札、囲いを出た鳩の行方、津田の命を狙う裏社会のドン、そして多くの人の 運命を狂わせた あの雪の一夜の邂逅…。彼の話は嘘?本当? 鳥飼は津田の話を頼りに小説が本当にフィクションなのか【検証】を始めるが、そこには【驚愕の真実】が待ち受けていた―。
■感想
金がなく新作を書いていない小説家の津田。明らかにダメ人間だ。津田が描く小説の中では、デリヘルの運転手兼小説家ということになっている。編集者に小説を渡す津田。バーテンのような職業についているので、小説内の人物は別人かと思ったのだが…。
周り周って、裏社会のドンからの追求から逃れるために作中の津田はバーテンの仕事をするために町を抜け出す。ここで、小説はフィクションではなくすべてが真実だと判明する。編集者が事実確認に向かう場面は滑稽でしかない。
とてつもない作品だ。序盤ではダメ小説家の津田が、古本屋の店主から遺品として三千万を受け取ることから変化が起きる。偽札が混ざっており、それを使ったことで裏社会のドンから狙われることになる。なぜそんなことになったのか。
津田は右往左往するのだが…。序盤では偶然カフェで知り合った男の家族が失踪した事件をメインとするような流れではあったが…。偽札事件と繋がりがあった。奇妙な人の繋がりが、本来受け取るはずだった偽札が津田の元に流れ込んでくる。
強烈なインパクトがあるのは、偽札絡みが、いつのまにか一家失踪事件に繋がり、その結末を津田が想像して描く部分だ。裏社会のドンに狙われ、一家は悲惨な状況になっているのが現実だとしても、津田の想像する小説の中だけではハッピーエンドにしたい。
そう思い創作したのだが…。ラストで津田が偶然ある人物に出会う。フィクションなのか現実なのか。不思議な感覚はラストの展開ですべてがすっきりする。ヘンテコなタイトルから想像できないほどすばらしい構成だ。
よく映像化できたなと思うほど複雑な構成だ。
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