グリーンブック


 2022.3.23      差別があたりまえの時代に反発する【グリーンブック】

                     
グリーンブック [ ヴィゴ・モーテンセン ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
実在した用心棒トニーとピアニストのシャーリーを描いた作品だ。黒人差別が色濃く残る南部へあえてツアーに向かったシャーリーとシャーリーに雇われたトニーの物語だ。雇い主が黒人で運転手が白人というパターンが黒人差別の地域で妙な化学反応を起こしている。序盤ではトニーは明らかに必要以上に黒人を差別する人物だったのだが、ツアーを共にすることで逆に黒人贔屓となっていく。

シャーリーも最初は自分の立場を理解し自重したいたのが、トニーに感化され自分を主張し始める。ふたりの関係が絶妙でよい。几帳面で礼儀正しいシャーリーと、がさつでいい加減ですぐに手がでるトニー。トニーがシャーリーのために相手に詰め寄る場面は感動的ですらある。

■ストーリー
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー。カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。

■感想
トニーのキャラが良い。用心棒らしい用心棒だ。そして、黒人への差別感情が強いのも当時としては典型的な白人かもしれない。そんなトニーがシャーリーに雇われ運転手としてツアーを一緒に周ることになる。

タイトルの由来は黒人専用のホテルなどがまとめられているグリーンブックをトニーが手渡されたからだろう。黒人であるため、トニーと同じホテルには泊まれずボロボロのホテルに泊まるシャーリー。雇い主が運転手よりも粗末なホテルに泊まるという、この流れの違和感が本作のポイントだろう。

トニーは、目の前でシャーリーが差別される場面を何度も見ている。ピアノの腕は一級品であるシャーリーは演奏で人々を魅了するのだが…。演奏を依頼してきたホテルで食事をしようとすると、地域の風習だからと同じ場所で食事をすることを拒否されたりもする。

それを告げる人々も悪気はないし差別意識もないのだろう。当たり前の習慣だからと自然と差別するのが当たり前といった感じだ。シャーリーに対する物腰が丁寧なだけに、より違和感が増す場面であることは間違いない。

トニーはシャーリーのために相手に暴力をふるったりもする。当たり前に差別していたトニーはシャーリーと出会うことで考え方を変えてくる。そして、シャーリーもトニーのがさつさを忌避していたのが、最後には一緒に手づかみでケンタッキーフライドチキンを食べたりもする。

非常に心がほっこりと温かくなる作品だ。当たり前に差別が行われる時代や地域で、トニーやシャーリーが困惑する場面は印象深い。そして、受け入れているシャーリーが最後には反発しているのも良い。

トニーやシャーリーが実在していたということが感動的だ。



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