2022.4.14 ゲイはエイズという偏見を広めた作品【フィラデルフィア】
フィラデルフィア [ トム・ハンクス ]
評価:3
■ヒトコト感想
HIVがまだ危険でよくわからないモノと思われた時代の作品だ。弁護士ベケットがエイズだとバレるくだりでは、顔にシミができているからバレたという流れとなっている。エイズを理由として弁護士事務所を解雇される。不当な解雇と訴えるためベケットは正義の弁護士であるミラーの協力を得ることになるのだが…。
ゲイだからエイズとなりそれは自業自得、という考え方が少しはあるのだろう。弁護士事務所側の主張というのは今ではありえないが、当時としては当たり前なのかもしれない。エイズの描写が古く、偏見にまみれているのが特徴的だ。ミラーでさえも、最初にベケットと面会した際にはベケットがエイズとわかると医者に飛び込み自分は感染していないかと確認するほどだ。
■ストーリー
法律事務所で働く敏腕弁護士ベケットは、体調不良で検査を受けた結果HIV感染を宣告される。会社側は仕事上のミスをでっちあげ、彼を解雇。不当な差別と闘うためにベケットは意を決して訴訟に踏み切る。彼の毅然とした姿勢に心打たれた弁護士ミラーの協力を得て、ついに自由と兄弟愛の街フィラデルフィアで注目の裁判が幕を開けた…。
『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が“エイズ"というシリアスなテーマに挑んだ感動のドラマ。主演のトム・ハンクスはこの作品でアカデミー賞主演男優賞をはじめ多数の賞に輝き、ハリウッドきっての演技派として揺るぎない地位を獲得した。
■感想
エイズに感染した者が二人登場してくる。ひとりは輸血による感染で同情され、ベケットは同性愛のため感染したということで自業自得、という流れとなっている。顔にできたシミでエイズだとバレる流れは、今では成立しないだろう。
ベケット役のトム・ハンクスの熱演がすさまじい。ラスト間近ではボロボロとなりげっそりとやせ細っている。もはや死ぬ直前という感じだ。エイズに感染するとどのように死ぬのかよくイメージがわかない状態なのかもしれない。
エイズと同性愛への偏見に満ちている。結局は最後までミラーを含めゲイは忌避するものとして描かれている。ただ、それとベケット本人の人格は別だ。弁護士事務所が結局のところどのような理由でベケットを解雇したのかは明言されていない。
それでも雰囲気でエイズを理由にというのはわかる。裁判では、エイズだと周りが知っていたかが焦点となる。それと共に、ベケットがゲイであったかと知っていたかもポイントとなっている。ゲイであることが差別される社会であったということなのだろう。
エイズは恐ろしい病気ではあるが、簡単に感染するものではない。それを頭では理解しつつも、受け入れることはできない。当時の社会ではエイズ感染者がいると、それだけで周りが嫌がるというのは理解できる。今では本作は成立しないだろう。
当時だから成立し、ゲイはエイズに感染するという間違った偏見を広めた原因の作品かもしれない。正しく予防すれば感染しないのだが、ゲイが受け入れられない原因のひとつとなった作品であることは間違いない。
若きトム・ハンクスとデンゼル・ワシントンが印象的だ。
おしらせ
感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp