フォトミステリー 


 2023.12.20      作者のファンアイテムのひとつだ 【フォトミステリー】

                     
フォトミステリー -PHOTO・MYSTERY- [ 道尾秀介 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
一枚の写真を見て、ミステリアスな展開を描く。俗にいう写真でヒトコトに近いのかもしれない。写真としてはなんてことない普通の写真だ。そこに道尾秀介が文章をつけることで、意味深な写真に見えてくる。ただ、それが一言なので、長大な物語になることはない。読み手の想像力に頼る部分が大きいのだろう。特に面白いのは、昔からある物語を連想させるものだ。

一休さんのトンチを連想させるのだが、その結果はまったく別のものになる。表題のようなものが付いているので、物語の情報の補完となる。よくある女子高生たちが土手でジャンプしている写真から、バンドを連想しそこにドラムがいないことで、別の展開へと発展させる。常人では思いつかないストーリーだ。

■ストーリー
世の中にすでに存在する写真に文を添えることでまったくあたらしい物語が生まれた――道尾秀介による危険な悪戯写真から生まれた、道尾秀介初のショートショート集。読み返すほど深まる――写真と連動する新感覚のミステリー。

■感想
頭に大きめの松ぼっくりをのせている子供の写真から、頭らか松ぼっくりが生えた子供、という物語を作る。写真を見た印象からそのままの物語もあれば、飛躍しすぎな物語もある。世界平和という連作では、扇風機に向かって声をだすことで、独特な震えた声になることを利用した宇宙人の侵略を描く。

誰もがやったことのある当たり前のことから連想するのだが…。世界平和②に続くのが良い。だんだん大きなものを壊していく遊びというのは妙な恐ろしさがあった。その後の展開を想像すると恐ろしくなる作品だ。

写真自体は明らかに変な写真もある。フリー素材の写真のようなものもあれば、ごく普通の家族での記念写真のようなものまである。チンパンジーが携帯をもって電話をしているような場面の写真を見て、毛生え薬が効きすぎて、というパターンとなる。

写真でヒトコトとして面白回答もあるのだろうが…。作家としてミステリーの題材になるようなパターンが多い。お墓参りの写真を見て、その中で実は死んでいた人があとでわかる、というのはうすら寒く感じてしまう。

基本的には写真に沿った物語が半ページに描かれている。物語ではなく、本当に1行で終わる作品もある。がっつりとしたミステリーとしての面白さを求めるとがっかりするかもしれない。軽い気持ちで写真を見ながらニヤニヤするのが正しい読み方なのかもしれない。

作者のファンならば、読む価値はあるかもしれない。写真に関する濃厚なミステリーを期待する人は読まない方がよいかもしれない。30分くらいですべてを読み終えてしまうくらいのボリュームだ。

作者のファンアイテムのひとつだ。



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