縁切り神社 


 2023.7.18      壮絶な男女の嫉妬 【縁切り神社】

                     
縁切り神社 / 田口ランディ
評価:3
■ヒトコト感想
男女の恋愛をテーマとした短編集。すべてが30ページ以内の短編なので、さらりと読める。やはり強烈なのは表題作でもある「縁切り神社」だ。別れを願う絵馬が飾られている神社があった。そこに、別れさせたい二人の名前が書かれている。縁切り神社にふたりが別れるように願うというのは相当な恨みをもっているのだろう。絵馬を見ていた季実子は、自分の名前と過去に付き合っていた男と別れるようにとの絵馬が書かれていた。

自分の名前が書かれた衝撃と、結果として別れていたこと。さらには、その絵馬を書いた者が死んでいること。男女の恋愛の恨みというのは、激しくそして執念深いというのがよくわかる短編だ。自分がその立場となったらかなり恨まれていたことに衝撃を受けるだろう。

■ストーリー
京都の奇妙な神社に迷い込んだ私は、一枚の絵馬に気づき、ぞっとした。「水野季実子と深田拓也の悪縁が切れますように」―水野季実子とは、まさしく私。深田拓也とは、私が一カ月前まで付きあっていた男。いったい誰が、なぜ…?表題作「縁切り神社」他、男女のリアルで意外な一幕を描く傑作・恋愛小説集!文庫オリジナル。

■感想
「島の思い出」は、母親の介護に疲れた父が自殺し、ひとり娘である自分が母親と同居することになった。母親との生活に疲れ屋久島へと一人旅に来たのだが…。母親の面倒から逃げ、父親にすべてを押し付けていたツケが一気に回ってきた。

屋久島のガイドをしている男と出会い、毎年定番の旅となる。よく屋久島への旅で人生観が変わるというのを聞いたことがある。屋久島を訪れるたびに女は変わっていく。そこから、ラストではもはやガイドが不要なほど屋久島に詳しくなっている。女の心境の変化がポイントなのだろう。

「エイプリルフールの女」は、不倫相手の男の妻が死んだことを知る。女は興味本位で不倫相手の妻の葬式に参加するのだが…。不倫といっても、男と結婚したかったわけではない。そんな微妙な関係のふたりだが…。不倫相手の妻からすると、夫の不倫相手に葬式に来られても困るだろう。

男としても、まさか不倫相手の女が来ているとは思わない。迷惑この上ないはずだが、男は平常心を保っている。もしかしたら妻が死んだショックが全てを凌駕することだったのかもしれない。ある意味不倫女の立場はこの際どうでもよくなっている。

「縁切り神社」は、神社に自分と付き合っていた男の名前が書かれていることに衝撃を受ける物語だ。さらに強烈なのは、誰がそれを書いたかまで絵馬に書かれているということだ。つまり、公にこのふたりが別れることを望んでいるとアピールしている。

人に恨まれるのは気分がよくない。絵馬がいつ書かれたかわからないが、実際に別れているので、効果があるように思えてしまう。そして、絵馬を書いた側が死んでいることから、人を呪わば穴二つではないが、自分に返ってくるのだろう。

さらりと読め、ちょっと怖くなる短編集だ。



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