英雄の証明


 2024.3.7    嘘が嘘を呼びドツボにはまる【英雄の証明】


                     
英雄の証明 [ アミル・ジャディディ ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
イランでの物語。日本との違いに驚くことがいくつかある。まず刑務所に投獄されている者が、一時的に休暇として外に出て自由を味わえることに驚いた。逃げ出したりはしないのだろうか?ラヒムは婚約者が拾った金貨の入ったバックを持ち主に返そうとする。その際に、警察に持っていくのではなく電柱に張り紙をしたりする。おそらく警察に届けてもネコババされるからだろう。

このあたりの文化の違いに驚いた。さらには、正しいことをやっているのだが、取り繕うために嘘をつき、その嘘がバレて信用されなくなりドツボにはまっていく様がすさまじい。お国柄なのか、SNSで動画や情報が拡散され、ラヒムの名誉が傷つけられたりもする。巻き込まれた形の吃音の息子がかわいそうになってくる。

■ストーリー
イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され服役している。そんな彼の婚約者が偶然にも大量の金貨を拾う。借金を返済すれば出所できる彼にとって、まさに神からの贈り物のように思えた。しかし、罪悪感に苛まれたラヒムは落とし主に返すことを決意。そのささやかな善行は、メディアで大々的に報じられ、正直者の囚人""と英雄に祭り上げられる。ところが、SNSを介して広まったある噂をきっかけに状況は一変。周囲の狂騒に翻弄され、父親を信じる無垢な吃音症の幼い息子をも残酷に巻き込んだ大事件へと発展していく。

■感想
借金で投獄され、休暇のタイミングで外にでる。ポイントなのは、借金を返せば刑務所から出られるということだ。そんな状況であればラヒムは拾ったバックの中の金貨をネコババし、そのまま借金返済にあてれば出所できるのだが…。

良心がとがめてネコババをやめ、バッグを持ち主に返そうとする。日本であれば警察に届ければ済む話が、イランではそうはいかないようだ。バッグの持ち主を探すために電柱に張り紙をしたり、連絡先を刑務所にしたりと忙しい。個人で持ち主を探すのでトラブルが起きるのだろう。

投獄され金が必要な身でありながら、バッグを持ち主に返したということで脚光を浴びることになるラヒム。この騒ぎがすさまじい。日本ではこうならないだろう。テレビの取材をうけたり寄付を受けて、刑務所から出所できることなるのだが…。

SNSでバッグを持ち主に返したことはウソだと書き込みが入る。そこから騒ぎとなり…。見ていてつらくなるのは、ラヒムの立ち回りだ。バッグを持ち主に返したのは良いが、その持ち主に連絡がとれずに真実を証明できない。そのため、偽の持ち主を用意して…。

嘘をついてごまかし、それがバレると別の嘘を用意する。真実はラヒムがバッグを返したことなのだが、それも周りからは信用されなくなる。この手の物語のオチとして、ラストで持ち主が現れ、それまでラヒムを否定してきたものたちに真実を思い知らせるという流れになるのかと思いきや…。

ラヒムはすべてを失い、再び刑務所に戻ることになる。一番かわいそうなのは、父親が正しいと信じており、実際にバッグを返した場面にもいた吃音の息子がさらし者になる場面だ。

ラヒムのその場を取り繕うためについた嘘は苦しくなる。



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