同志少女よ、敵を撃て [ 逢坂冬馬 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
第二次世界大戦中のロシア。ドイツ軍に母親を殺されたセラフィマが、狙撃の技術を学び狙撃兵としてドイツ軍への復讐を誓う物語だ。狙撃兵としての成長物語に近いのだが、根底にあるのは恨みだ。狙撃兵の特性上、兵士の中でも異質な者たち。そんな女狙撃兵だけを集めた部隊が戦場で活躍する。
ドイツの狙撃兵とのひりつくような戦い。姿を見せることが死につながる。狙撃を行った瞬間に自分の居場所が敵にバレるので、次の瞬間にはやられてしまう。狙撃兵、女だけの部隊の特殊さが物語を面白いものにしている。すさまじい狙撃の技術をもつ者が生き残るわけではない。戦場の掟を破るものはいち早く死んでいく。狙撃兵の緊迫感あふれる戦いが描かれている。
■ストーリー
小さな村「イワノフスカヤ村」で母親と猟を行っていたセラフィマ。ある日、ドイツ軍に村人達を惨殺され、赤軍に家や村人の死体を燃やされた。以降、猟をしてた時の狙撃の技術を使い狙撃兵として母親を殺したドイツ人へ復讐を誓うと同時に、母親の亡骸や家を焦土作戦によって燃やしたイリーナに復讐を計画。数々の厳しい訓練を終え、激戦区と化していたスターリングラードで見たものは…
■感想
セラフィマの母親は猟師として銃をもっていた。村人を襲うドイツ人を撃つために猟銃を構えたのだが…。その瞬間をドイツ軍の狙撃兵に撃たれてしまう。一瞬の出来事だ。母親をドイツ人に殺されたセラフィマは、ロシアの軍に拾われ狙撃兵として育てられる。
女だけの狙撃兵の軍団。序盤では狙撃兵として成長するために様々な訓練が描かれている。数百メートル先の目標を狙撃するためには、空気の温度すら計算しながら銃弾の着弾位置を予測する。冷静であり緻密な計算能力が問われる狙撃兵だ。
女狙撃兵の軍団は目覚ましい活躍をするのだが、仲間は次々と死んでいく。天才的な狙撃能力をもつ女は最初の戦場で死んでしまう。自分の能力の高さに酔い、次々と敵を撃ち殺す快感から本来のルールを忘れ、狙撃兵としてのタブーである、ひとつの場所に長くとどまることをしてしまう。
狙撃兵の射線を察知され、狙撃兵の位置がばれると、敵の狙撃兵に撃ち殺されてしまう。普通の兵士と違い、狙撃兵は姿を見せることはタブーとされている。同じ国の軍隊でも狙撃兵がその性質から嫌われているというのは強烈だ。
セラフィマは母親を殺したドイツの狙撃兵の情報を得る。ラストではその狙撃兵との対決となる。狙撃兵は相手が姿を見せるまで我慢比べの様相がある。お互いが相手を一流の狙撃兵だと認識している場合は、非常に高度な騙し合いとなる。
セラフィマとイエーガーとのラストの対決はヒリつくものがある。そして、戦争の興奮状態からドイツ人の女性に暴行を働こうとする味方兵士に怒りを覚えるセラフィマ。ラストでセラフィマはある決断をするのだが、非常に衝撃的なラストとなっている。
ヒリつくような狙撃兵の戦いがメインだ。