ブラッド・スローン


 2022.10.18     ただの交通事故犯のはずが…【ブラッド・スローン】

                     
ブラッド・スローン/ニコライ・コスター=ワルドー
評価:3

■ヒトコト感想
エリート金融マンがちょっとした自動車事故をきっかけとして刑務所に収監される。そこで生き残るための行動がエスカレートしていく。髭をたくわえムキムキの肉体をもつ男が刑務所から出所した。何か大きな取引を行うと思われた時、過去の回想がスタートする。エリート金融マンが刑務所内部で生き残るためにとる行動が強烈だ。

殺される前に殺す。なめられないために必要以上に暴力をふるう。そして、ただの交通事故での収監が、次々と刑期が延びていく。根っからの悪ではないが、自分の家族を守るためには悪になる。そもそも、最初の収監の段階でおとなしくしていたら…。また違った人生になっていたのかもしれない。悪への転落具合は抑えようがない。

■ストーリー
完璧な、非の打ちどころの無いエリート人生を歩んできた男。金融ビジネスで成功し、美しい妻と息子にも恵まれ、絵に描いたような順風満帆で幸せな生活を送っていた。しかし、ある夜、不注意から起こした自動車事故で死亡者を出したことがきっかけで、人生が一変する。有罪判決を受けた彼が収監された刑務所は、全米いや世界屈指の重犯罪者の巣窟だった。悪が蔓延る熾烈な世界で生き抜く術はただ一つ、“殺られる前に殺る"こと。持ち前の明晰な頭脳を駆使し、肉体を鋼のように鍛え上げ、冷酷非情、酷薄無情の世界をのし上がる。熾烈な抗争を勝ち抜きやがて頭角を現す彼を、最大の試練が待ち受ける…。

■感想
刑務所の中では少しの油断もゆるされない。舐められると地獄の刑務所生活がまっている。そのため、男は必要以上に刑務所内で舐められないよう過剰な行動にでる。最初は仲間に認められるために違反行為に手を染め成功し気に入られる。

その後、エスカレートしヒスパニック系との激しい抗争の中で、囚人を殺害してしまう。このことで、より凶悪犯が収監される刑務所へ移送されることになる。ただの自動車事故での数か月の収監のはずが、いつの間にか凶悪犯扱いとなっているのは強烈だ。

エリート金融マンのため刑務所内ではマネーというあだ名がついている。肉体を鍛え上げ口ひげを蓄え、まるで別人となっている。体中に入れ墨を入れるのも舐められないためなのだろう。刑務所のボスから気に入られ外に出た際の仕事を依頼されるのだが…。

冒頭からマネーだけがひとり違った雰囲気をだしている。マネーをマークしている警察の存在に気づき、そして仲間の裏切りに気づきマネーは独自の動きをはじめる。組織をつぶす方向に動き、そして、自分も再び収監されることを選ぶ。

マネーの根底にあるのは、「なぜこうなった?」という後悔だろうか。ここまでくると、それをマネーから感じることはできない。家族を守るために自分は終身刑になることを覚悟している。再び収監され、隣りの檻にいるボスから家族を殺すと通告される。

マネーは隠し持った針金で檻をあけ、ボスと対決する。最初から刑務所のボスの座を奪い取るつもりでやってきたのだろう。家族を守るためというのもあるのだが、最初のエリート金融マンという姿からは大きく変化している。

マネーの家族がかわいそうで仕方がない。



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