ぼくから遠く離れて (幻冬舎文庫) [ 辻仁成 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
大学生の光一が主人公の本作。Keyという謎の女性からのメッセージで光一はアンジュと名前を変えて女装することを強要される。光一自身に女装すると気持ちが変わる経験があったため、光一の心は変化していく。性別は男であるが心が女性を描いた物語。
自分の新たな面を探すというのだろうか。隣に住む大学生のマナは可愛らしい女性かと思っていたが、実は性別は男だった。世の中には様々な人がいる。光一は、謎めいたKeyは身近にいる誰かではないかと思い探し始める。光一が美しい見た目をしており、周りの女性からモテるというのもポイントなのだろう。女装趣味のある男なのか、心が女の男なのか、どちらかにより大きく物語のトーンは変わっていく。
■ストーリー
その名前じゃ、女の子にはなれないでしょう?大学生の光一に次々に届く、Keyという謎の女性からのメッセージ。やがてKeyは、光一に名前を変え、女装することを強要しだす。「ぼくがぼくじゃないみたい」。鏡に映ったもうひとりの自分を愛し始めた光一。自ら選んだ性を生きる日本人たち。望んだ肉体と精神が手に入る驚きのラスト!
■感想
Keyという謎の女性からのメッセージにより、自分の中の女性を感じ始める光一。ごく普通のサークル活動に熱心な大学生であった光一が、一つのメッセージにより変わっていく。光一のことをアンジュと名づけ、女装することを強く勧める。
同級生たちは光一のことを普通の大学生男子だと思っている。光一自身もサークルの先輩と付き合っており、肉体関係もある。ごく普通のノーマルな男子大学生の心の奥底にある変化がひとつのメッセージによって呼び覚まされる物語だ。
光一の隣に住むマナという女子大学生と親密になる光一。可愛らしい女の子と思っていたマナが、実は男だと判明する。見た目はまるっきり女性ではあるが性別は男。そして、マナは光一に恋をしていた。さらには光一に女装願望があることを感じ取り、それを率先してすすめたりもする。
マナの気持ちは複雑だろう。理想は、マナは女性として、光一は美しい男としての生活なのかもしれない。女装映えする見た目の光一だけに、女装した際には美しい女性へと変身してしまう。
周りの様々な怪しい人物をKeyではないかと想像してしまう光一。マナが一番その可能性が高いと考えていたのだが…。結局は意外な人物がKeyであると判明する。光一の行動をつぶさに観察しメッセージを送ってくるので大学の同級生か隣に住むマナしかないかと思い込んでいたのだが…。
ラストの展開はちょっと納得できなかった。結局は、光一はどのような選択をしたのだろうか。光一の心の中には女性になりたいという願望があったのかは最後までわからなかった。
LGBTQを考えさせられる物語だ。