ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 


 2022.8.22      巧みな話術で情報を入手する元マジシャン 【ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人】

                     
ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 [ 東野圭吾 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
元マジシャンの叔父が事件を解決する。真世の父親が何者かに殺害され、叔父が動き出す。コロナ渦や鬼滅の刃を連想させるような「幻ラビ」という大ヒットマンガが登場してくる。明らかにここ最近の世間の話題を物語に盛り込んでいる。探偵役の叔父のキャラ付けが特殊で、金にシビアであり、軽妙な口車で相手を煙に巻く。相手から情報を引き出すために適当なことを話す。

まさに一流の詐欺師のような立ち回りをしている。ミステリーの定番として叔父は様々な情報を得ていながら、真世にはほとんど説明せず下働きばかりさせている。読者は真世と同じように釈然としない状態のまま叔父が誘導するように物語の結末を読まされているような感じだ。

■ストーリー
謎を解くためなら、手段を選ばない。コロナの時代に、とんでもないヒーローがあらわれた!名もなき町。ほとんどの人が訪れたこともなく、訪れようともしない町。けれど、この町は寂れてはいても観光地で、再び客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。多くの住民の期待を集めていた計画はしかし、世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。町は望みを絶たれてしまう。

そんなタイミングで殺人事件が発生。犯人はもちろん、犯行の流れも謎だらけ。当然だが、警察は、被害者遺族にも関係者にも捜査過程を教えてくれない。いったい、何が起こったのか。「俺は自分の手で、警察より先に真相を突き止めたいと思っている」──。颯爽とあらわれた〝黒い魔術師〟が人を喰ったような知恵と仕掛けを駆使して、犯人と警察に挑む!

■感想
しばらく音信不通だった父親が何者かに殺されていた。娘である真世は混乱しながらも叔父に助けられていく。コロナ渦での混乱、アニメの大ヒットなどが盛り込まれている。恐らくは世間の流れを意識した物語なのだろう。

コロナ渦で新規プロジェクトがとん挫し、みなが苦しくなる。どのようにコロナ渦を乗り越えていくのかや、父親の葬式がリモートでの焼香が行われるなどが描かれている。事件の解決のために叔父がしゃしゃり出てくるのだが、元マジシャンということでやることがぶっ飛んでいる。

デジタル機器を駆使しての情報収集になる。叔父が詳しく真世に説明しないまま、盗聴や動画撮影をして情報を得る。警察の捜査をまるっきり信じておらず、自分たちで犯人を見つけようとするのが強烈だ。キャラとしてはかなり強引で破天荒だ。

こんな叔父がいたら真世も肩身の狭い思いをするだろう。警察側も、必然的に叔父に対しては要注意人物というレッテルを張ることになる。金にシビアで、姪に対して情報を提供する代わりにホテル代や食事代を肩代わりさせるなんてのはやりすぎだ。

叔父のキャラは好感のもてるものではない。適当なことを話し、相手から情報を引き出す。それは一流の話術なのかもしれないが、騙された方からするとたまらない。事件についてはそこまで入り組んでいない。

ごく普通の事件を叔父のキャラと世間の流れをリンクさせることで成立させている。ITを駆使して情報を収集することの重要性と、警察組織がかなりずさんという描かれ方をしている。それなりにインパクトがあるのは間違いないのだが…。トリックが微妙だ。

このキャラでシリーズ化は難しいだろう。



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