アルピニスト


 2023.7.23    ドキュメンタリーならでわのラスト【アルピニスト】

                     

評価:3.5

■ヒトコト感想
登山ドキュメンタリー。主役は若き天才登山家のルクレールだ。幼少期はADHDと診断され、集中力がなく騒がしい子供だった。登山というのめり込むものが見つかった瞬間、ルクレールは変わっていく。命綱をつけずにたったひとりで世界有数の岩壁や氷壁を登る。有名な登山家からも、ありえないと言われるほどぶっ飛んだ存在だ。特徴的なのはルクレールが名声を求めて山に登っているわけではないことだ。

ただ、自分が登りたいから登っているだけ。世界的な知名度はないが、登山家の間では、その群を抜いた実績から人知れず有名人となっている。ただ悲しいのは、ラストの展開だ。ドキュメンタリーなので、起こったことをそのまま結末として描くしかない。強烈なラストだ。

■ストーリー
断崖絶壁に命綱なしで挑む若き天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレールに密着したドキュメンタリー。世界有数の岩壁や氷壁を、たったひとりで命綱もつけず登るというクライミングスタイルの「フリーソロ」を貫いてきたマーク・アンドレ・ルクレール。名声を求めない彼自身の性格から世界的な知名度はほぼ皆無だが、不可能とされていた数々の難所に挑み、新たな記録を次々と打ち立てていく。

そんな知られざる天才に、これまでクライミングを題材にしたドキュメンタリー作品を数多く手がけてきたピーター・モーティマー監督とニック・ローゼン監督が密着。雄大な自然を背景に、体力と精神力の極限に挑むマークの姿を、臨場感あふれる映像で映し出す。

■感想
ただその行為が好きだからやるだけ。この動機は強い。命を賭ける登山に、何の見返りも求めない男ルクレール。無名ではあるが世界有数の岩壁や氷壁を次々と単独でクリアしていた。驚きなのは命綱なしで険しい壁を制覇しているところだ。

ドキュメンタリーなので、実際にルクレールが壁を登る映像が続いていく。まさにハラハラする状況だ。命綱なしでギリギリの岩壁を登る。岩の小さな隙間に指をひっかけ、岩のわずかなくぼみに足をのせる。それで絶壁を命綱なしで登る。とても常人にできることではない。

ルクレールが他の登山家と異なるのは地位や名声にまったく興味がないことだ。恐らくADHDが影響しているのだろう。ひとつのことに対する集中力はすさまじいが、一般的な社会生活を送る際には何かしら問題がある。映画の撮影クルーに連絡なしに好き勝手に山に登る。

確かに一緒に仕事をするとなるとやっかいかもしれない。ただ、そんなマイナス部分を凌駕する魅力がルクレールにはある。ルクレールの登山に対する熱量を感じると、他の者たちはたちまちルクレールに魅了されていく。

氷壁を登る場面は強烈だ。いつ崩れるかわからない氷の壁に斧のようなものを刺して、それを頼りに登っていく。足をかけるのも氷だ。全体重を氷の壁にかける。氷が溶けて崩れると体はまっさかさまになる。途中では岩の壁があると、靴や道具を持ち換えて登り続ける。

それらすべてを壁を登りながらやるのがすさまじい。有名登山家の誰もが信じられない偉業だと声をそろえるように、確かに一般人から見ても当然ながら信じられない行為に見えてくる。

ドキュメンタリーとして、ラストで悲しい知らせがあるのもしょうがないことなのだろう。



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