ある男


 2024.5.2    衝撃的な戸籍ロンダリング【ある男】


                     
ある男 [ 石川慶 ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
再婚した夫が死に、親戚と付き合いのない夫の兄弟が線香をあげにやってくると、夫の兄は仏壇に飾られた夫の写真を見て誰だ?とつぶやく。よく考えれば、その人の身元を証明するのは、周りの人しかいない。書類上ではその人物が入れ替わっていてもわからない。誰も自分のことを知らない土地にやってくると、自己申告と書類でしか証明できない。

弁護士の城戸は依頼者の里枝の依頼を受け、亡くなった夫の素性を調べるのだが…。血のつながりに縛られることがテーマとして語られている。城戸は在日朝鮮人3世であり、そのことで過去に嫌な思いをしたことがあるそぶりがある。そのため、血のつながりを放棄するために他人の戸籍を手に入れた里枝の夫に同情のようなものを感じているのだろう。

■ストーリー
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、依頼者の里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫「大祐」(窪田正孝)の身元調査という奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経て子供を連れて故郷に戻り、「大祐」と再婚。そして新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日「大祐」が不慮の事故で命を落としてしまう。長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が法要に訪れ、遺影を見ると「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げる。愛したはずの夫「大祐」は、名前もわからないまったくの別人だったのだ……。

■感想
結婚した相手が別人だった。ただ、今回のパターンは戸籍上の別人というだけで、人となりはそのまま里枝は受け入れているので問題はない。ただ、なぜ他人の戸籍で生活しているかが疑問となり城戸へ相談することになる。

本作のポイントは謎の人物Xが誰かがわかるまでのミステリアス感だ。結論としては死刑囚の息子ということで、自分の血を恨み、その結果、戸籍の変更ということになる。戸籍を変えるということは、それまでの人間関係をすべてリセットしたいという強い思いがあるのだろう。

強烈なのは、戸籍ロンダリングを仲介した詐欺師の存在だ。城戸が在日であることを見抜き、城戸について嫌なことばかり言う嫌味な男だ。この詐欺師がすべてを手配し戸籍ロンダリングを行っていた。謎の人物Xは元ボクサーであり、戸籍を2度変更していた。

なぜそのような手段をとったのか。ボクサーとして目が出てきた時でさえ、自分の素性がばれることを恐れ、リングネームを使ったり、新人王の決勝にでることを渋ったりもする。死刑囚の息子というのがそこまで足かせになるのか、というインパクトがある。

そもそも戸籍を変えるというのは、何か犯罪を犯しており逃げるために別人になりすましたと思われていた。城戸が在日のために苦悩したことや、Xが父親のために苦悩したことが似たようなこととして語られている。その本人が誰かなんてのは書類上のことでしかない。

ラストの流れとしては、妻ともうまくいっていない城戸がバーで自分を偽って会話をする。それはまさに、今までの自分をすべて捨てて、新たな戸籍を手に入れた気分になりたかったのだろうか。。

衝撃的なミステリーだ。



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