アルキメデスの大戦


 2023.1.6     戦艦大和の見積もり不正を暴け【アルキメデスの大戦】

                     
アルキメデスの大戦 [ 菅田将暉 ]
評価:3

■ヒトコト感想
太平洋戦争前の日本。冒頭からいきなり戦艦大和が沈没する映像が登場してくる。超巨大な戦艦がなすすべもなく沈んでいく。日本の希望であった大和はどのようにして作られたのか。巨大戦艦を作ることの困難さが描かれているかと思えばそうではない。時代にそぐわない巨大戦艦は、国家予算の無駄遣いと否定されていた。本作が、実は大和の建設を阻止する物語というのが意外だった。

天才数学者の櫂が、戦艦大和の見積もりの不正を暴く。単純に大和の資料がない中で、どのようにして大和の設計図を手に入れるのかがポイントだ。最終的には櫂が自ら大和の設計図を作り上げてしまう。そこから、鉄の総量からの見積もりの計算式を導きだし大和の見積もりの不正を暴くのだが…。ラストは意外な展開となる。

■ストーリー
1933年(昭和8年)。欧米列強との対立を深め、軍拡路線を歩み始めた日本。海軍省は、世界最大の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていた。だが省内は決して一枚岩ではなく、この計画に反対する者も。「今後の海戦は航空機が主流」という自論を持つ海軍少将・山本五十六は、巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いか、独自に見積もりを算出して明白にしようと考えていた。しかし戦艦に関する一切の情報は、建造推進派の者たちが秘匿している。

必要なのは、軍部の息がかかっていない協力者…。山本が目を付けたのは、100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直。ところがこの櫂という男は、数学を偏愛し、大の軍隊嫌いという一筋縄ではいかない変わり者だった。頑なに協力を拒む櫂に、山本は衝撃の一言を叩きつける。「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は、必ず戦争を始める」…この言葉に意を決した櫂は、帝国海軍という巨大な権力の中枢に、たったひとりで飛び込んでいく。天才数学者VS海軍、かつてない頭脳戦が始まった。同調圧力と妨害工作のなか、巨大戦艦の秘密に迫る櫂。その艦の名は、【大和】…。

■感想
海軍の主流は戦艦から航空機となる。それを予見していた山本五十六は、戦艦大和の建設に反対する。大和推進組織が提出してきた大和の見積もりが不当に安いことに目を付けた山本は、見積もりの不正を暴くために天才数学者の櫂を海軍に引き入れるのだが…。

そもそも櫂への協力が少なすぎる。素人の櫂が大和の見積もりを行うのに、紙切れ3枚程度の情報しかない。それ以外は軍規として櫂は見ることができない。となると櫂は見積もりを算出するために大和の設計からスタートしなければならない。

櫂は独力で大和を設計する。本来なら、設計図があり部品や人の費用が分かった状態で見積もるはずなのだが…。とんでもない遠回りだ。それでも櫂は天才のためにすべてをやりきっている。大和側の勢力から情報統制されており、なかなか情報を入手できない。

まさに次々と困難が目の前にやってくるという感じだ。どこか「半沢直樹」的な雰囲気がある。周りは敵だらけで絶対に無理だと思われたことを櫂の能力で大逆転してしまう。最後の会議の場での櫂の逆転劇はまさに爽快だ。

大和の見積もりの不正を暴き、無事に大和建設が白紙に戻ったかと思いきや…。そこから二転三転ある。外国へ巨大戦艦の建設計画を漏らさないために、あえて低い見積もりを出していた。戦略的な見積もりだと言う。

そこから戦争へ進み続ける日本を最後に止めるのは、大和のような象徴的な巨大戦艦が沈没することだ、とまで言い切ってしまう。時代にそぐわない超巨大戦艦がなぜ作られたのか。すべてが真実だとは思わないが、ある程度説得力のある内容となっている。

大逆転の流れからの二転三転が良い。



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