アジアの天使 [ 池松壮亮 ]
評価:3
■ヒトコト感想
日韓の俳優が出演している本作。息子を連れて韓国に渡ってきた剛。適当な兄の誘いに乗ったことが発端なのだが…。韓国語がまったく話せない状態で無謀な移住だ。兄の輸入販売を手伝うはずが…。韓国の部下に金を持ち逃げされてしまう。一方で元人気アイドルのソルは歌手として芽が出ないことに悩んでいたのだが…。
ソルの兄妹が墓参りに行く際に偶然剛たちと一緒になる。そこから奇妙なロードムービー的な展開となる。少し恋愛映画風な雰囲気があるのだが、ソルと剛のコミュニケーションはお互いのつたない英語しかない。剛が奥手で何もソルに言えないことが進展を阻んでいる。客観的にみると負け犬たちが寄り添って旅をしているような感じだ。
■ストーリー
8歳のひとり息子の学(佐藤凌)を持つ小説家の青木剛(池松壮亮)は、病気で妻を亡くし、疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡った。ほとんど韓国語も話せない中、自由奔放な兄の言うがまま怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目に。元・人気アイドルのソル(チェ・ヒソ)は、自分の歌いたい歌を歌えずに悩んでいたが、亡くなった父母の代わりに、兄・ジョンウ(キム・ミンジェ)と喘息持ちの妹・ポム(キム・イェウン)を養うため、細々と芸能活動を続けていた。
しかし、その時彼らはまだ知らない。事業に失敗した青木と兄、学たちと、資本主義社会に弾かれたソルと兄、妹たち──どん底に落ちた日本と韓国の2つの家族が共に運命を歩む時、ある“奇跡"を目の当たりにすることを・・・
■感想
息子を伴い、言葉の通じない韓国へ来た剛。唯一の頼りである兄を訪ねたのだが…。冒頭から韓国語を話せないことによるトラブルが勃発する。その後、兄と出会い事業を手伝うことになるのだが…。いい加減な兄と真面目だが韓国語が話せない剛という図式ができあがる。
一方でソルはショッピングセンターで客がいない舞台で歌っている。売れない元アイドルの悲哀がにじみ出ている。その場で剛とソルが出会うのだが…。言葉が通じないので、そのまま別れることになる。
ひょんなことからソルの兄妹と剛家族が一緒に旅をすることになる。兄だけが韓国語を話せるのでコミュニケーションをとれる。剛とその息子は全く韓国語を話せない。ぎこちない雰囲気が良い。ソルと剛の会話は片言の英語だけ。
お互いがなんとなく惹かれているような雰囲気があるのだが、剛は妻を亡くしてすぐだということと、韓国語が話せないので思いを伝えづらい。剛は妻をガンで亡くしており、ソルは親をガンで亡くしている。お互い共通点があり、親密になっていくのだが…。
ソルが事務所の社長とトラブルになった場で剛と兄が助けに入ったりもする。ソルの親戚の家をたずねて、そこで剛や兄たちも泊めてもらうことになる。田舎の韓国での生活を経験し、その後にソウルに戻る。剛たちがラストではソウルのソルたちのマンションで食事をしているシーンで終わる。
結局このふた家族がどうなるのかは描かれていない。ソルと剛が付き合うことはないような気がした。やはりお互いの母国語でコミュニケーションがとれないのは辛いのだろう。
日韓の特殊な家族の物語だ。