愛のあとにくるもの 


 2022.5.28      日本人と韓国人の恋愛物語 【愛のあとにくるもの】

                     
愛のあとにくるもの (幻冬舎文庫) [ 辻仁成 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
韓国人と日本人の恋愛を描いた作品。本作も「右岸」「左岸」のように別の作家とのコラボ作品のようだ。韓国と日本の国家間のイデオロギーだとか、嫌韓や反日とふたつの国同士は何かと問題がある。そのことが個人の恋愛にどのように関係してくるのか。韓国人の崔紅と作家の男の恋愛が描かれている。

一度は別れ、その後、作家として成功したあとに再び崔紅と出会う男。若いころの恋愛で失敗したことを後悔し、再び恋愛の道に突入しようとしたのだが…。一度壊れた関係を再び取り戻すのは難しいようだ。韓国人と日本人という特徴がなければごく普通の恋愛小説なのかもしれない。喧嘩をすると自分が韓国人だからと、突然人種を持ち出してくるのはいただけない。

■ストーリー
変わらない愛って、信じますか?」小説家を目指す潤吾は、失恋の痛手のなか、韓国からの留学生・崔紅と出会いそう問われる。そこから始まる狂おしい愛の生活―。やがて二人は、小さな行き違いで決別するが、七年後の再会で愛が蘇り…。

■感想
韓国人の崔紅と日本人の小説家志望の男の恋愛物語。序盤では恋愛に熱を入れながらも、お互いの国の違いによる違和感を覚え始めている。特に崔紅は、普段は普通だが男と喧嘩をすると自分が韓国人だから、というようなことを言い始める。

決してそんなことはないとしても、どこか崔紅の心の中では日本へ留学している韓国人が虐げられているという思いがあるのかもしれない。また、崔紅がもともとお嬢様だったこともあり生活レベルの違いから、男の方に変化が現れているのがわかる。

ちょっとした日々のひっかかりをきっかけとして喧嘩となる。カフェでケーキだけを頼んで飲み物を頼まないことが、韓国人だから店員に嫌味を言われたと感じる崔紅。決してそんなことはない。日本人でもケーキだけを食べる人がいると説明しても、崔紅の思い込みを解くことはできない。

このあたり、若さとフレッシュで恋愛的な雰囲気を感じてしまう。こんな感じのやりとりができるのは若さゆえだろう。年齢を重ねた大人たちであれば、なぁなぁで済ませてしまうことだろう。

小説家として成功し韓国で作品が出版されたりもする。そこで偶然通訳として登場してくる崔紅。久々の再会を契機にふたりの恋は盛り上がるのかと思いきや…。大人になると大人の事情がある。例え男の方が熱心にアプローチしたところで相手がなびくとは限らない。

ごくオーソドックスな恋愛小説の流れだ。ただ、韓国人と日本人ということで、ふたりの恋愛はうまくいかなかったという描かれ方をしている。確かに普通の恋愛よりはハードルは高いだろう。愛国心があればあるほど、恋愛成就への道は厳しくなるはずだ。

一風変わった恋愛小説といった感じだ。



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