アイヒマンの後継者 ミリグラム博士の恐るべき告発


 2023.2.12     恐ろしい実験【アイヒマンの後継者 ミリグラム博士の恐るべき告発】

                     
アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発
評価:3

■ヒトコト感想
冒頭から恐ろしい雰囲気で実験がスタートする。教師と生徒役に分かれ、それぞれ相手が見えない部屋に入り実験をスタートする。教師が出す問題を生徒が間違えると、相手に電気ショックを与える。それも徐々に電気ショックは強くなっていく。人は命令されているとはいえ、どこまで相手に残酷なことができるかの実験だ。

人間の大量虐殺はなぜ起こるのかを紐解くための実験としてミリグラム博士が実施した実験なのだが…。実験の結果よりも、この実験が世間で大きな話題となり、ミリグラム博士を一躍スターダムにのし上げたことが衝撃的だ。批判が噴出した実験ではあるが、世界で大量虐殺が行われると、今でもこの実験の結果が話題になるというのは強烈だ。

■ストーリー
1961年8月、イェール大学でスタンレー・ミルグラム博士の実験が開始された。実験は一人が先生、もう一人は学習者となり、先生役が問題を出題。別室にいる学習者役が答えを間違えると電気ショックが与えられ、間違えるごとに電圧は上げられる。くじ引きで役割は分けられたが、学習者役は実験の協力者で、被験者は常に先生役になるように操作されていた。学習者は次第に呻き声をあげるも、被験者=先生役の電気ショックの手は止まらない。

ほとんどの被験者は戸惑いながらも実験の継続を促されると最後の450V(ボルト)まで電気ショックを与え続けた。この実験は、ナチスによるホロコースト(大量虐殺)がどのように起こったのか?普通の人々が権威にどこまで服従するのか科学的に実証することが目的だったが、その結果は社会に大きな衝撃を与えることに…。

■感想
人間は人に命令されると、どれだけ残酷なことでもやってしまうのだろうか。教師役の男は、不正解の電気ショックを与えるたびに、隣の部屋から叫び声が聞こえたとしても実験を続けた人が多かったようだ。

実験をリタイアしたのは職業的に電気を扱い、その危険性を理解している者などしかいない。止めたいと言っても、監視者が続けてくださいと言うと大人しく続けたりもする。心のどこかで、自分の意思ではなく強制的にやらされているということが、残酷行為の免罪符になっているのだろう。

この実験結果は衝撃的ではあるが、ある程度想定できる。ナチスによるホロコーストも、巨大な権力の前には人は麻痺してしまうのだろう。社会的には大きなショックをうけるだろう。ある意味、詐欺的な手法で相手を騙しての実験ということでミリグラム博士は批判されている。

本作では、博士の様々な実験についても語られている。車に挟まれた手紙を、ポストに投函しなおすのかは、あて先によるらしい。誰かが空を見上げていると、周りの人たちは知らず知らずのうちに同じように空に何かあるのではないかと、空を見上げるようだ。

本作はミリグラム博士の功績を描いた作品だ。実話をベースにしており、その当時、ミリグラム博士が批判もされ、実験者として有名となり、ドラマ化されたりもしたららしい。科学者の実験がドラマ化されるというのはかなり特殊だ。

それほど社会に与えたインパクトが大きいということなのだろう。自分に置き換えたとして、何も知らない状態でこの実験を受けたとしたら後ろめたい気持ちはあるが、強制されているということを理由にして最後まで実験を続けてしまうだろう。

なんとも恐ろしい実験だ。



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