BOLT


 2023.8.8    原発事故を復旧させる描写が原始的すぎる【BOLT】

                     
BOLT【Blu-ray】 [ 永瀬正敏 ]
評価:2.5

■ヒトコト感想
東日本大震災と原発事故を描いた作品のように思えるのだが…。エピソードが3つに別れている。原発内部の制御タンクのボトルを締めるエピソードと、孤独死した者の遺品整理をするエピソードと、街の整備屋のエピソードとなっている。大地震と原発事故、それら大惨事を経験した男の人生は変わっていく。タイトルからすると、原発事故を復旧させるための鬼気迫る対応を描いているのかと思ったが、それはエピソード1だけ。

その後は、人生観が変わったのか孤独死の老人の遺品整理や町のジャンク屋のようなことをしている。何もかもが嫌になる気持ちはわかるのだが…。全体として大震災の後始末ということで、陰鬱な気持ちになるのは間違いないだろう。

■ストーリー
ある日、日本のある場所で大地震が発生。その振動で原子力発電所のボルトがゆるみ、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ始めた。高放射能冷却水を止めるため、男は仲間とともにボルトを締めに向かう。この未曾有の大惨事を引き金に、男の人生は大きく翻弄されていく。

■感想
エピソード1の原発でのボルトのゆるみというのはいくら何でもやりすぎだ。危険な原発の汚染水が洩れ続ける。ボルトを締めないと汚染水を止めることができない。ベテラン職員たちが防護服に身を包み、いかにもな薄暗い施設に入り込む。

原発を未知の恐ろしいモノとして描いており、とげとげの謎の物体としている。漏れ出す汚染水は緑色をしており、放射能は紫の光となっている。描写としてはわかりやすいが、ボルトを大きなレンチのようなもので締めるのだが、人の力で締めるのは原始的すぎる。

ベテラン職員の中に主人公がおり、放射能に体が汚染されながらの作業となる。若手が力が必要だからと勝手に入り込みボトルを締める。若手の混乱と主人公の後先考えない自己犠牲の精神はなんだか違和感が満点だった。

震災での原発事故はもっと大規模であっても、ここまで原始的ではないのだろう。低予算映画のようにひとつの場面が繰り返される。この大惨事の経験が主人公を変えていく。何もなければ大企業の職員として将来安定だったのが、原発事故を経験し仕事を辞めてしまう。

後半は様変わりした内容となっている。エピソード2では遺品整理の仕事をしている。未経験で入ったので戸惑いながらの作業となる。震災で孤独となり孤独死した人物の遺品整理なのだろう。陰鬱な表現が続いていく。実際に東日本大震災で起きえたことなのかもしれない。

それでも、主人公の生き方については共感できない。トラウマのような状態になっているのかもしれないが、エピソード3の展開は微妙だ。最初から最後までエピソード1の流れの方がよかったような気がした。

少し変わった作品であることは間違いない。



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