9人の翻訳者 囚われたベストセラー


 2022.11.26     人気小説を流出させたのは誰だ?【9人の翻訳者 囚われたベストセラー】

                     
9人の翻訳家 囚われたベストセラー/ランベール・ウィルソン
評価:3

■ヒトコト感想
ベストセラー作家の作品を事前に流出させないため、各国の翻訳者を軟禁状態として秘密を守ろうとする男。完全に外部との接触が遮断された状態で、翻訳を続ける9人の翻訳者たち。ここまで徹底した管理をしたが、ネット上で何者かから脅迫がくる。金を振り込まなければ作品を流出させるという。。物語の謎は誰が作品を流出させたかの疑心暗鬼にある。

そして、出版社の社長は翻訳者たちを脅して流出を辞めさせようとするのだが…。そこから、社長が逮捕され男と面会する場面となる。途中でいくつかの謎解きがあるのだが、それは前振りにすぎない。ラストで衝撃の結末が待っている。作品を流出させたのは金が目的ではなく別の目的があった。

■ストーリー
フランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時出版のため、9ヵ国の翻訳者が集められた。外部との接触は一切禁止され、日々原稿を翻訳する。しかしある夜、出版社社長の元に「冒頭10ページを流出させた。500万ユーロ支払わなければ全ページが流出する」という脅迫メールが届く――。

■感想
ベストセラー作品の出版前の流出を防ぐために、各国の翻訳家を一カ所に集め軟禁状態とする。そもそもの発端として、過去に作品が流出したというのがあるからだろう。仮にハリーポッターのように世界的に人気の作品が翻訳前に流出したとしたら…。

9人の翻訳家はひたすら毎日翻訳作業にいそしんでいるのだが…。完璧と思われた計画でも穴はある。どこから流出したのか、ネット上に身代金の要求と発売前の作品の流出騒ぎが起きる。ここで、怪しまれるのは作品を翻訳していた9人の翻訳家になるのだが…。

基本のミステリーとしては誰が作品を流出させたかにある。完全に監視され外部と連絡が取れない状態でありながら、誰がどうやって流出させたのか。出版社の社長は9人の翻訳家を疑っているのだが…。物語の途中から、9人の中の一部が結託し社長から作品の原稿を盗み出すという描写がある。

かなりギリギリの攻防の中で、原稿のコピーに成功したかと思いきや…。オチとしてはその行為は原稿流出には無関係ということがわかる。ミステリアスな仕掛けを用意し二転三転させている。

ラストでは驚きの真実が明らかとなる。そもそもが原稿を流出させる云々はあまり関係なかった。犯人の真の目的は別にあった。ベストセラー作家と出版社の社長の関係。そして、実はベストセラー作家が書いたのではなく、別の人間がその作品を書いていた。

書いた本人であれば原稿を盗まずとも簡単に流出させることはできた。それまでのミステリー的な仕掛けは前振りでしかなく、ラストに怒涛の展開が待っている。すべては出版社の社長が罠にはまったということなのだろう。

9人の翻訳家を軟禁して翻訳させるというのがぶっ飛んでいる。



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