11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち


 2022.6.28      生まれる時代を間違えた者たち【11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち】

                     
11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち [ 井浦新 ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
三島由紀夫については名前は知っているが作品を読んだことはない。特殊な思想をもち、最終的には割腹自殺したというのは知っていた。本作を見て、当時の異常な雰囲気と三島の思想にのまれていった若者たちのとてつもない熱量を感じた。ある意味、焦りからの自殺なのかもしれない。

何か動かなければならない、という強い思いがありながら何もできない。時間だけが過ぎていくことに耐えられなかったのだろう。作家としてどれだけ作品を描いていたかは知らないが、強烈なインパクトがあるのは間違いない。若者たちが日本を思い、三島に命を預け死を覚悟する。今の時代では別の形で同じような熱い思いを抱いている若者がいるのかもしれないが…。異常な時代であったことは間違いない。

■ストーリー
数々の名作と伝説を遺し、1970年11月25日に、防衛庁内で衝撃的な自決を遂げた一人の男、三島由紀夫。頂点を極めた大作家の壮絶な最期に、世界中が驚愕した。45歳という短い人生を自ら幕引きした彼は、その人生において、何を表現したかったのか。ともに割腹自殺した青年・森田必勝(盾の会学生長)と三島のその心の奥底には、何が潜んでいたのかー。

■感想
三島由紀夫が何を目指していたのか。法律を改正し自衛隊が軍隊として成立することを目的としていたのか。日米安保条約に反対だとか、天皇制を維持するだとか。作中ではいろいろな意見が飛び交う。作中の三島由紀夫は、とてもテロじみた行為を行うような荒くれものには見えない。

学生たちにも理路整然と議論し、相手を受け入れる懐の深さがある。自衛隊を改革することが目的なのか。左翼が先に行動を起こしたことを悔しがる様を見ていると、ただ、何か行動を起こしたかっただけでは?と思えてしまった。

学生たちは死に急ぐような雰囲気すらある。死に場所を探しているのだろう。三島由紀夫と森田だけが突っ走っており、周りはそれについているだけ。強烈なのは、三島が行動を起こすことを決断し、同士を集める場面だ。

森田が同級生の部屋を訪ねると、そこに地方から上京してきた父親が訪ねてくる。一人息子を大事に考える父親の姿を見ると、息子を死地へと送るなんてことはできないと考える。森田にも親がいただろうに、そのことをいっさい考えないのだろう。

市ヶ谷に侵入し隊員の前で演説をする。この演説の真の目的は何なのか。その前の計画段階でも、明らかにずさんな計画となっている。何かに追い立てられるように死に急いでいるとしか思えなかった。ラストの演説の場面で、必死に言葉を続ける三島に対して、自衛官たちには少しも響いていない。

三島は生まれてくる時代を間違えたのだろう。侍として主君のために死ぬ覚悟のある武士としてでは、評価されたのだろう。切腹の場面も、無意味な無駄死にとしか思えなかった。

今の時代では考えられない行動の数々だ。



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