ゼロの未来


 2018.8.16      未来のIT土方の姿 【ゼロの未来】

                     
ゼロの未来 [ クリストフ・ヴァルツ ]
評価:3

■ヒトコト感想
近未来の描写がどこか荒廃とした世界となっている。近未来ではあるが雑多でバーチャルな世界とリアルが行き来するような物語となっている。バーチャルな世界は洗練されてはいるが、リアルはボロボロの倉庫のような場所でひたすらモニターの前でコントローラーを操作する日常が描かれている。本作の主人公は天才プログラマーのコーエンだ。

謎めいた数式をひたすらブロックのようなテトリスみたいなものに当てはめていく。終わりのない高度なゲームをひたすらやらされているような感じだろうか。バーチャルな世界の女性へと気持ちを奪われるコーエン。天才少年のボブに翻弄されながら、まるでマトリックスのように、この世界の秘密を暴くような流れだ。

■ストーリー
コンピューターに支配された近未来。天才プログラマーのコーエンは、荒廃した教会に一人こもり、謎めいた数式「ゼロ」の解明に挑んでいた。ある日、パーティーに連れ出されたコーエンは魅力的な女性ベインズリーと出会う。最初は困惑するコーエンだったが、次第に彼女に惹かれていく。

また同じ頃、「ゼロ」の秘密を知る青年ボブとの友情も次第に生まれ始める。閉ざされた世界で、愛と友情に気づいたコーエンの人生は大きく変動していく。孤独に生きてきた男が人々とふれあい見つける、本当の幸せとは――。そして「ゼロ」を解明することはできるのだろうか――。

■感想
近未来というと、洗練された世界をイメージするが、本作は激しい格差が描かれている。近未来といえども貧困層はそれなりの仕事しかしていない。やっていることは高度なのだが、はたから見るとただゲームをしているようにしか見えない。

コーエンは精神が病み、いつくるでもない人生についてアドバイスしてくれる電話をひたすら待ち続ける。すべてがコンピュータで制御された世界。魅力的な女であるペインズリーと出会うことでコーエンの人生観が変わっていく。

バーチャルな世界でペインズリーと親密な関係となる。ただ、そこには様々な邪魔が入る。まるでマトリックスのようにすべては虚構で、マネージャーというすべてを仕切る存在が黒幕なのだろうか。それともコーエンは精神を病んでおかしくなったのだろうか。

強烈なインパクトはないのだが、この近未来の世界というのが、それなりにインパクトがある。近未来だがピザの宅配であったりギャングの送迎であったり、全てがコンピュータに支配されているわけではない。最下層は変わらずコンピュータの恩恵を受けられないということなのだろう。

ラストはよくわからない結末となっている。マネージャーにすべての真実を告げられるコーエン。そこでコーエンは真の幸せをつかむためにペインズリーと行動を共にすることを選ぶのか。それともコンピュータを制御する仕事をし続けるのか。

カラフルな近未来の映像と、近未来であっても変わらない過酷な労働環境というのは、見ていて悲しくなる。コーエンが常に監視カメラで監視され続けるというのも、近未来の何者かに操作されているということを表現したいのだろうか。

こんな近未来は嫌だという見本のような流れだ。



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