湯を沸かすほどの熱い愛


 2018.3.10      悲しみのあとの明るさ 【湯を沸かすほどの熱い愛】

                     
湯を沸かすほどの熱い愛
評価:3

■ヒトコト感想
夫がふらりと疾走し、残された双葉と娘はたくましく生きる。序盤は母子家庭での苦労や、娘がイジメに合う場面が描かれている。双葉が娘に対して負けるなという言葉が印象的だ。また、娘もどんな状態でも最終的には負けずにイジメを克服していく姿がすばらしい。後半では双葉のガンが判明し、余命わずかと知ると、そこから悔いのない生き方をしようとする。

双葉のたくましさには涙がでてくる。また、その家族関係の複雑さにも驚愕しかない。絶対にやっておくべきことの中では、双葉にとって辛いこともあるはずが、臆することなく実行している。衰弱しボロボロになろうとも、笑顔を見せる。娘たちの思いを考えると、見ている観衆に悲しさが伝染してしまう。

■ストーリー
銭湯「幸の湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。

その日から、彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め実行していく。家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる、気が優しすぎる娘を独り立ちさせる、娘をある人に会わせる…母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うものだった。

■感想
幸野双葉が主人公の本作。娘がイジメにあっているとわかると、負けずに学校に通い続けろと叱咤激励する。娘のイジメの状況は壮絶だ。制服を隠すことで体操服で授業を受けるしかない娘。その状況を変えるために体操服を脱ぎだして…。

双葉の強い思いが娘に通じた場面だろう。娘のイジメ問題が収束に近づくと、今度は双葉自身の問題にぶち当たる。ここで双葉のガンが判明し余命わずかということがわかる。なんとも残酷な状況だ。双葉はすぐさま出て行った夫を探しだし、一緒に生活を共にするのだが…。

双葉は自分の死が近いと知ってからは、様々な人を巻き込んで行動している。元夫を巻き込み、夫の連れ子としてついてきた9歳の女の子も、自分の子供と変わらず面倒をみる。そして、双葉が死ぬまでに絶対にやっておきたいことがあった。

それは、娘の本当の親に会わせるということだ。かなり複雑な状況だ。自分が死ぬと分かってから娘たちのことを考え、自分ができることを精一杯行う。さらには最後の旅行途中に出会ったヒッチハイカーに対しても叱咤激励する。この逞しさは、まさに母は強しという感じだ。

元夫やヒッチハイカーなどを巻き込み、銭湯「幸の湯」を復活させる双葉。そこで最後の時を過ごす。この手の死が間近にせまった物語には強烈な悲しみがある。表面上は気丈に振る舞ってはいるが、子供たちの悲しみは何気ないしぐさからにじみでている

母親が段々衰弱していき、死へ近づいていると知れたら…。どんなに理解していようとも悲しいのは確かだ。ラストではタイトルの意味がわかる衝撃的な展開となる。双葉に巻き込まれ、人生が変わっていった者たちの、最後の双葉への恩返しということなのだろう。

悲しみからのラストの明るさへ続く流れはすばらしい。



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