淀川でバタフライ 


 2021.11.5      作者の母親は大阪のオカンの典型だ 【淀川でバタフライ】

                     
淀川でバタフライ[ たかのてるこ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
面白旅エッセイで有名な作者が、身近な出来事を面白エッセイとして描く。本作のポイントは間違いなく”おかん”だ。作者自身もどこか大阪のおばちゃん風味があるのだが、作者の母親は輪をかけて強烈だ。大阪のおばちゃんの中でさらに強烈な個性をもつ人物を中心としたエッセイ集。作者の日常がかすんでしまい、ほぼおかんの印象しかない。

50歳を過ぎて腹話術を始め、それなりに売れているのがすごい。さらには腹話術の本まで出版している。作者が気ままな一人旅が好きなのはわかっていたが、実はそれが父親譲りだったというのも良い。母親と父親が正反対の性格で、父親が寡黙というのもバランスがとれているようで最高だ。作中には少ししんみりとくるエッセイもある。旅エッセイよりもインパクトがあるように感じてしまった。

■ストーリー
“日本一おもろい旅人OL”てるこのルーツ、ここにあり!50歳を過ぎて、腹話術師になったおかんとの爆笑バトル。石仏の如く動じないおとん。「ガンジス河でバタフライ」の前に泳いだ元祖は淀川だった!ハチャメチャで痛快な、抱腹絶倒の日常エッセイ第一弾。

■感想
旅エッセイでの、はちゃめちゃな感じが印象深い作者。もともと大阪のおばちゃんの雰囲気を感じていたのだが、そのルーツはやはりすさまじかった。特に両親の話が強烈だ。母親に関してはトラ柄のシャツを着てパンチパーマをあてているような典型的な大阪のおばちゃんを想像してしまった。

作者と顔がそっくりで海苔のような眉毛と濃いチーク。これだけでもすさまじいのに、すさまじく強引な会話が秀逸だ。作者をさらに上回るであろう大阪風味には圧倒されてしまうだろう。

母親とは対照的に父親は寡黙で無反応らしい。このバランスが最高だ。両親のなれそめについても語られているのだが、なんとも言いようのない面白さがある。無反応な父親と反応多寡な母親。ある日、50を過ぎた母親が急に腹話術師になるなんてのは、なかなかないことだろう。

小学生時代の作者が、授業参観に来た母親をやりこめた作文の話は最高だ。小学生ながらに作文の内容は、まさにお笑いのセオリーをしっかりと守った文章となっているのが良い。

作者のメインは旅エッセイなのだが、本作のような日常を描いたエッセイの方が向いているのでは?と思えてきた。笑いあり、しんみりとくるエッセイあり。学生時代に文化祭で自主映画を作成し、その主演の同級生が社会人となり突然不慮の死を遂げるエッセイは、なんとも言えない雰囲気だ。

笑い一辺倒ではないのが良い。そして、すべてのエッセイがほぼ事実なのだろう。旅エッセイではここまで極端なお笑いエピソードはないだけに、本作は強烈な印象として残っている。

作者の日常のエッセイをもっと読んでみたいと思った。



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