ワイルドフラワー 


 2020.6.30      NYに翻弄される人々 【ワイルドフラワー】

                     
ワイルドフラワー / 辻仁成
評価:3
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■ヒトコト感想
ニューヨークで生活する1人の女と3人の男の物語だ。自分がゲイではないかと悩む夢野。写真家として師匠を尊敬しながらも、師匠の妻に惹かれる坊城。家族をないがしろにして女に惹かれ続ける作家の久遠。それぞれが、少しだけ繋がりがある。ひとりの女に惹かれる3人。ただ、直接的な女の取り合いとはならない。

印象的なのは夢野だ。イケメンで女にもモテるのだが、自分にゲイの素養があることに悩み苦しんでいる。自分はゲイではないと思い込むために、あえて女と寝ようとする。その行為はエスカレートし暴行へとつながる。女に反応せず男に反応した時の絶望というのは夢野の混乱から伺い知れる。ニューヨークという場がよりゲイを感じる街なのかもしれない。

■ストーリー
俺はゲイ?僕は性の奴隷?そして、作家の私は…。ニューヨークに暮らす一人の女と三人の男がそれぞれの真実を探し求め、抑圧された自分を解放していく、インモラルな純愛小説。

■感想
ニューヨークで暮らす女を中心に3人の男が描かれている。強烈なのは自分がゲイではないかと悩む夢野のエピソードだ。女にもてる夢野だが、自分がゲイであるとうすうす感じている。男に言い寄られた際に、自分の股間が熱くなるのが抑えられない。

反対に女と寝る場面となっても、股間はピクリともしない。夢野の中では、自分がゲイであるはずがない、という強い思いがある。それが否定されることは、夢野自身が否定されることにつながるのだろう。夢野の混乱は女に対する暴力として表面化する。

女とSEXなしの愛人契約を結ぶ小説家の久遠は、家族をないがしろにしてまで女に入れ込む。事前に愛人契約としてSEXなしとうたってはいるが、心の奥底ではちょっとしたはずみでやれるのではないかと思っていたのだろう。

何回かチャンスはあるものの、女からは拒否されてしまう。悲しいのは久遠がどれだけ必死に女を繋ぎとめようとしても、女はゲイではないかと恐れる横暴な夢野や師匠との関係に悩む坊城とあっさりと関係をもってしまう。久遠が最もみじめな登場人物だろう。

坊城は師匠の妻に恋心をいだいていたが、師匠が妻と別れたいからと坊城に妻と浮気をしろと命令する。坊城の立場は微妙だが、そこであっさりと師匠の命令をきいて師匠の妻と浮気をしてしまう。そこからが崩壊の始まりだ。

師匠と別れさせるためだけに付き合っていたはずが、いつの間にか泥沼にはまってしまう。その結果、悲惨な状況となる。師匠の操り人形状態となっていた坊城は、すべての師匠からの呪縛を解き放つために、師匠を殺害しようと考えてしまう。

ニューヨークという地が人々を惑わせるのだろうか。



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