わたしを離さないで


 2019.1.28      臓器を提供するためだけの人間 【わたしを離さないで】
                     
わたしを離さないで【Blu-ray】 [ キャリー・マリガン ]
評価:3

■ヒトコト感想
原作小説は未読。他人に臓器を提供するためだけに生まれてきた子供たちの物語。何も知らされずウソの情報で周りから隔離された学校で生活してきた子供たち。キャシー、ルース、トミーの3人は仲が良いのだが…。三角関係や自分たちが未来のない人間であることなど、非常に複雑な心境が入り混じっている。大人となり臓器を提供することになると、そこにはあきらめのような気持ちすら見えてくる。

生まれたときから決まった運命のある子供たち。未来へのかすかな希望としては、臓器を提供することを延期できる奇妙な噂を信じるしかない。臓器を提供するためだけに生かされている子供たち。衝撃的なのは、臓器を提供したあと、なんのケアもされずに放置されるシーンだろう。

■ストーリー
外界から隔絶した寄宿学校ヘールシャムは、他人に臓器を“提供”するために生まれてきた〈特別な存在〉を育てる施設。キャシー、ルース、トミーは、そこで小さい頃から一緒に過ごしてきた。しかしルースとトミーが恋仲になったことから、トミーに想いを寄せていたキャシーは二人のもとを離れ、3人の絆は壊れてしまう。やがて、彼らに逃れようのない過酷な運命が近づく。ルースの“提供”が始まる頃、3人は思わぬ再会を果たすが……。

■感想
他人に臓器を提供するために生まれてきた子供たち。キャシーとトミーは恋人のような関係となるが、そこにルースが入り込む形となる。ルースとトミーに遠慮するキャシー。まだ何も知らされていない段階では、子供たちは幸せに満ちていたのだが…。

ある教師が子供たちに真実を告げる。自分たちには当たり前の未来がないと知った時の子供たちの表情は衝撃的だ。それでも子供たちはグレるでもなく自暴自棄になるでもなく、淡々と事実を受け入れるしかない。ある意味、純粋培養された子供たちなのだろう。

ふたりの間で真実の恋があれば、臓器の提供を延期できるという噂が子供たちの間で広まる。それは真実なのか。キャシーからするとトミーとルースがそれを確かめればよいと考えるのだが…。子供たちは成長し、臓器の提供ができる歳になると、ルースの臓器の提供が始まる。

もはやこの段階にくると同じ人間としては扱ってもらえない。ただ、臓器を補完する肉塊でしかない。相手に適合しなければ、その時点で終了となる。それは死を意味する。どうにも抜け出すことができないすさまじい人生だ。

大人となったキャシーとトミーが再開し、真実の愛を手に提供の延期を求めるのだが…。ここですべてが明らかとなる。トミーが大声で叫びたくなる気持ちもよくわかる。抗いようのない運命をどのようにして受け入れるべきなのか。

ルースがこの世から去り、トミーもあとへと続く。衝撃的なのは、複数回の提供を繰り返しボロボロのルースの最後の提供のシーンだ。臓器を取り出すと、そのまま生命反応がなくなることを、医者たちはまるで後片付けのようにさっさと処理してしまう。

臓器提供だけの人間は存在してはならない。



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