わたしは、ダニエル・ブレイク


 2020.10.14      これこそ貧困層の実情だろう【わたしは、ダニエル・ブレイク】

                     
わたしは、ダニエル・ブレイク
評価:3.5

■ヒトコト感想
イギリスの貧困層の実情を描いた物語。元大工で今は心臓病で働けない59歳のダニエル。国の援助を受けられず四苦八苦する姿が描かれている。本作を見ると、非常に腹が立ってくる。役所のルールを徹底する姿には怒りすら覚える。ネットを使えない高齢者を切り捨てるような仕組みの数々。あえて支援を受けることをあきらめさせるような、様々なめんどくさい制度。

ダニエルと同様に支援を受けようとしたシングルマザーのケイティと二人の子どもに対して親身に対応するダニエル。序盤では気難しい老害かと思ったが、実はダニエルはすこぶる良い人物だ。口が悪いが、相手のことを親身に考える良い男。ダニエルが支援を受けることに苦労しているのは見ていて辛くなる。

■ストーリー
ダニエルが教えてくれたこと-隣の誰かを助けるだけで、人生は変えられるイギリス北東部ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイクは、心臓の病を患い医者から仕事を止められる。国の援助を受けようとするが、複雑な制度が立ちふさがり必要な援助を受けることが出来ない。悪戦苦闘するダニエルだったが、シングルマザーのケイティと二人の子供の家族を助けたことから、交流が生まれる。貧しいなかでも、寄り添い合い絆を深めていくダニエルとケイティたち。しかし、厳しい現実が彼らを次第に追いつめていく。

■感想
厳しい現実だ。働かきたくても医者に働くことを止められた男が、国からの支援を受けるために、あえて求職活動をしなければならない。役所はルールだからの一辺倒。役所側としても国から命令され厳しいルールを課しているのだろうが…。

貧困者と役所の担当者のやりとりは、わかってはいても役所の対応には腹が立つ。杓子定規で少しの融通もきかない。ケイティ家族が少し時間に遅れたからといって、支援を受けさせないなんてはあまりにも厳しすぎる仕打ちだ。

ダニエルはネットを使えない。役所はネットでの申請を義務とする。この時点で、高齢者を切り捨てている。効率化を重視しているのだろうが…。ダニエルは気難しい老人のように見えるが良い男だ。隣に住む黒人たちと仲良くし、黒人のビジネスを手伝ったりもする。

俗に言う老害が文句を言っているだけかと思ったがそうではない。ダニエルの言っていることは筋が通っている。支援費用をもらうために、働けないとわかっていながら履歴書を作成する講座を受け、求職活動をする。相手が乗り気になっても、ダニエルは断るしかない。とんだ茶番だ。

ケイティは子供たちに食事を与え、自分は食事をしない。それが極限の状態になると、食料の配給を受けたその場で缶詰を開けて食べてしまう。衝撃的な場面ではあるが、ケイティ自身もショックを受け、ダニエルはケイティを慰める。そこまで極限状態となるのはすさまじい。

ケイティは女を利用し金を稼ごうとする。ダニエルは必死に支援費を得るために行動するのだが…。役所ではルール違反だと数々の罰則を伝えられる。ダニエルは最後に自分の実情を役所の壁にスプレーで落書きし、周りから賞賛を得る。

これがイギリスの貧困層の実情かと思うとすさまじい。



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