わが母の記


 2018.11.25      昭和のセレブ生活 【わが母の記】

                     
わが母の記 [ 役所広司 ]
評価:3

■ヒトコト感想
井上靖の小説を原作とした本作。主人公の小説家は井上靖本人なのだろう。昭和の時代に売れっ子作家であった井上靖が、認知症を患った母親との交流を描く。随所に昭和のセレブ的な雰囲気を感じることができる。家にはお手伝いさんがいて住み込みで働く書生までいる。軽井沢に別荘があり、母親の誕生日に旅行し豪華なホテルに泊まったりもする。

まさに売れっ子作家の生活だが、絶対君主的な雰囲気もある。娘たちは売れっ子作家である父親に反発したりもする。母親と息子の関係よりも、昭和の時代の裕福な家庭についての方が興味深い。過去のトラウマや姉妹との関係まで、ラストで母親が亡くなるシーンは思わず涙がこぼれることだろう。

■ストーリー
役所広司と樹木希林が、確執を乗り越えて再び心を寄せ合う親子を演じたドラマ。母に捨てられたというトラウマを抱えたまま大人になった男が、年老いていく母と新たに向き合うようになり…。

■感想
井上靖の原作小説は未読。ただ、昭和の小説家で家族に対してかなり独裁的な面があるというのは伺い知れた。そして、売れっ子作家はかなり裕福な生活をしていたのだとわかった。昭和の時代にナイフとフォークを使って家で食事をする。

女中や書生がおり、何不自由ない暮らしをしているとわかる。そんな状態で、田舎で暮らす母親と作家の家族たちの交流が描かれている。ボケ始めた母親の面倒を見る家族の大変さ。売れっ子作家ではあるが、子供たちに対してかなり厳しく接している。

昭和のセレブの生活は非常に興味深い。巨大な屋敷と、編集者と思わしき人物が頻繁に出入りする。昔は本の一冊一冊に印鑑を押していたということには驚いた。家族総出での儀式のようなものなのだろう。母親を通して家族の関係が赤裸々に描かれている。

作家の娘である三姉妹は、それぞれ個性がある。結婚し孫が生まれるころになると、母親の認知症も激しさをましていく。ここで、ときおり正常に戻る母親の状況というのがなんとも涙を誘う場面である。

兄弟に認知症を患った母親の世話をまかせ、小説家としてますます成功していく。遠く離れた母親のことを気にしているのだが、それよりも目の前の家族や娘のことの方が気になっている。そんな状況で、突然目の前に母親の姿が思い浮かぶ。

まさに虫の知らせとでもいうのだろう。危篤という知らせを受け、そこから移動手段を手配しあさいちで移動しようとバタバタしていたところに、突然鳴り出す電話。この時点で何かを察知したように皆の動きが止まる。まさに強烈な場面だ。

昭和のセレブの生活の印象は強烈なものがある。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp