嘘八百


 2020.3.30      古物商のコンゲーム【嘘八百】

                     
嘘八百 [ 中井貴一 ]
評価:3

■ヒトコト感想
古物商の物語。古物商が偽物を掴まされたら、それは自分の目利きが悪いせいだということらしい。物語的にはコンゲームの要素が強い。古物商として頭角を現していた則夫は、過去に大物鑑定士に騙され贋作を掴まされる。そこからは転落人生で、今では則夫は素人を騙して贋作を売りつける詐欺師になっていた。

そんな則夫が新たに出会った仲間とともに大物鑑定士に贋作を売りつけるという物語だ。内容がシンプルなだけに、扱うものが現金ではなく贋作というのが新鮮だ。紙を作る専門家。誰の筆跡でもマネできる者。そして、茶器を作り出すことができる者。則夫の巧みな話術で大物鑑定士を騙す。騙された方は騙されたと気づいた時、騙した側を訴えたりしないのだろうか。。。

■ストーリー
大阪・堺。千利休を生んだ茶の湯の聖地に、大物ねらい狙いで空振りばかりの目利き古物商・小池則夫(中井貴一)がお宝を探しにやってきた。出会ったのは、腕は立つのに落ちぶれくすぶっていた陶芸家・野田佐輔(佐々木蔵之介)。ある大御所鑑定士に一杯食わされ、人生の出端をくじかれた二人は結託し、“幻の利休の茶器"を仕立て、仕返しついでに一攫千金を狙う。それは、家族や仲間、大御所鑑定士、さらには文化庁までも巻き込む、大騒動に――。

■感想
古物商の騙し合いの物語だ。冒頭から則夫が素人を騙して大金をせしめようとする。則夫がある家で幻の利休の茶器を見つけ出す。喜び勇んで、持ち主にはガラクタしかないと説明し全部で100万で買い取ると交渉する。その結果として、100万で利休の茶器を手に入れたはよい良いが、それは偽物だった。。

またしても騙された則夫だったが、精巧な偽物を作った男たちと組むことになる。贋作を掴まされた者は、犯人を見つけたらどのような行動をとるのか。捕まえて警察に突き出すのが普通なのだろうか。見抜けなかった古物商が悪いという流れのようだ。

それぞれの専門家が作り上げた偽物の数々。素人は騙せても大物鑑定士を騙すことができるのか。茶器を作る男は、丹精込めて贋作を作りあげる。そして、すべての舞台は整い、幻の利休の茶器をお披露目するのだが…。このあたりはまるっきりコンゲームだ。

それぞれが役割を決め、値を吊り上げる役が決まっている。箔をつけるために大英博物館からもイギリス人がやってきたりもする。あっという間に値が吊り上がるのだが、最後の最後で大物鑑定士がこれは偽物だと叫ぶ。

茶器を作り上げる男の執念と、騙された則夫の復讐。ただ、茶器を作る男は、復讐というよりも自分の茶器がどれだけの評価を受けるかだけを気にしている。ラストのどんでん返しもよい良い。ただ、贋作を作りプロに売ったとして、誰もそれが偽物だと気づかなければ誰もがハッピーなのだろう。

精巧な贋作は時に本物になる。なんだか奇妙な男たちではあるが、コンゲームの流れとしては新しい。結局のところ鑑定士が鑑定するのは、客観的事実を集めて最後には主観で判断するしかないということだ。

贋作を本物のように見せる、その手法が痛快だ。



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