裏切りのホワイトカード 池袋ウェストゲートパーク13 


 2018.4.16      SNSとtwitterを駆使 【裏切りのホワイトカード 池袋ウェストゲートパーク13】

                     
裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII / 石田衣良
評価:3
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■ヒトコト感想
IWGPシリーズ第13弾。いつものごとく、時事ネタを扱っている。短編として格となる事件はあるのだが、その周辺で事件が広がる方法や、情報の収集方法など、明らかに初期のころのIWGPとは異なっている。SNSやTwitterを駆使しての調査となっている。児童虐待や一般人にまで蔓延する薬物。犯罪情報の集まる掲示板にATMの不正引き出しまで、どこかで聞いたことのあるようなニュースをネタにしている。

特に、ATMの不正引き出し事件は、もしかしたら裏では同じようなやりとりがあったのでは?と思わずにはいられない。事件とネットが切り離せない状況であることは間違いない。誤情報により炎上し、あげくは職場にまで影響をおよぼすなど、まさに今の世相を反映している作品だ。

■ストーリー
池袋のトラブルシューター、マコトのもとにはあらゆる難題が持ち込まれる。でたらめの虐待疑惑をネットに書き込まれて炎上した宅配ドライバー。母親が悪い男とドラッグにはまった女子中学生。根拠のない情報が溢れるオカルト・サイト。ATMの不正操作による大規模詐欺。収録の4編はどれも現実の事件を彷彿とさせるものばかり。

■感想
マコトがいつものごとくトラブルを解決する。児童虐待があり、その犯人に仕立て上げられた元旦那の物語だ。まさに今の時代を表した作品だ。デマを演出した男の元に殴り込みに行くなど、過去の事件を連想させる流れがある。

悲惨な事件であっても、裏事情がはっきりするとそれだけでネット上の印象が変わり、あっという間に擁護されたりもする。まさにネット時代の事件と、その流れを扱った物語だ。世間は小出しにされた情報により、あっさりと右へ行ったり左へ行ったりするということなのだろう。

一般人にまで薬物が蔓延していることを描いた作品もある。母親が付き合いだした男の影響で薬物中毒の症状を見せる。マコトやタカシは、薬中となった者を助けることは難しいと考える。ごく普通の一般人でも少し道を踏み外すと、もしかしたら薬物に手を出す可能性があるのかもしれない。

何も知らない娘だけが困惑し、外部に助けを求めるしかない。恐ろしいのは、はめられた母親の方は、自分が薬物におかされているということに無自覚だということだ。

ATMの不正操作の物語は強烈だ。日本で実際に起こった事件を元にしている。実際の出し子はヤクザだったが、若者を動員し同時に引き出せばとんでもなく大量の金を盗み出すことができるのだろう。Gボーイズは、危ないことに手をだしているイメージだが、リスクの高いことには手を出さない。

ネット上の犯罪掲示板なども描いており、昨今の犯罪事情を如実に表しているといえるだろう。巨大製薬会社の御曹司がネットの犯罪掲示板を運営しているということが、特別な要素ではなく、最後は尻すぼみのようになっている。

時代の流れを反映した短編集だ。



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