海よりもまだ深く


 2019.6.8      バツいちクズ男の哀愁漂う生活【海よりもまだ深く】

                     
海よりもまだ深く [ 阿部寛 ]
評価:3

■ヒトコト感想
離婚したダメ中年男の良多を阿部寛が演じる。実家に帰ると母親が隠しているへそくりがないかと探し回る。小金が手に入るとすぐにギャンブルに走る。本業は売れない小説家だが、食うために探偵事務所に所属している。離婚し離れて生活する息子のことが何より大事で仕方がない。

良多は典型的なダメ人間で、元妻の響子が愛想をつかせるのもよくわかる。たまたま良多の実家に響子と良多と息子の三人が揃い、母親とたわいもない話をする。良多と響子の関係はもはや修復不可能なのだろう。強烈なインパクトはないのだが、一度壊れてしまった家族関係というのは、なかなか修復が難しく、その先にはなんとも言えない悲しい雰囲気が漂っている。

■ストーリー
笑ってしまうほどのダメ人生を更新中の中年男、良多(阿部寛)。15年前に文学賞を1度とったきりの自称作家で、今は探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。元妻の響子(真木よう子)には愛想を尽かされ、息子・真悟の養育費も満足に払えないくせに、彼女に新恋人ができたことにショックを受けている。

そんな良多の頼みの綱は、団地で気楽な独り暮らしを送る母の淑子(樹木希林)だ。ある日、たまたま淑子の家に集まった良多と響子と真悟は、台風のため翌朝まで帰れなくなる。こうして、偶然取り戻した、一夜かぎりの家族の時間が始まるが――。

■感想
団地で気楽な生活をしている良多の母親。そこに離れて暮らす息子である良多がやってきた。なんのためにやってきたかというと…。母親が隠しているへそくりをこっそり手に入れようとする。良多はまさに典型的なダメ人間だ。

ちょっと小金が手に入ると、競輪にのめりこんでしまう。アルバイト的に探偵業務を行ってはいるのだが、ターゲットに対して不倫を黙っている代わりに金をせびったりもする。まさに人間のクズのような所業の数々だ。そんな良多には別れた妻と息子がいた。

良多はダメ人間ではあるが、息子が野球を始めたということでグローブやスパイクを買ってあげたいと考える。月に一度の面会の日。当然ながら3カ月も養育費を滞納したりと良多はクズ人間っぷりをアピールしている。響子に再婚のチャンスがあることを知ると、それに嫉妬し探偵の力を使って調査したりもする。

家族の時には、そこまで気にしなかったことが、別れたことでよりその重要さに気づく。まさに離婚した男たちの誰もが感じるような状態に良多は陥っているのだろう。

ひょんなことから、母親の団地で良多、響子、息子と泊まることになる。そこで様々な話をするのだが…。良多は結婚には向いていない男なのだろう。響子が次にすすませてくれ、とお願いする場面は強烈だ。良多からすると未練があったのかもしれないが…。

離婚したダメ男の哀愁漂う雰囲気が強烈だ。明るく前向きになれるたぐいの物語ではない。ただ、一度別れた夫婦が、台風がふきすさぶ中で、小さな団地で一緒に夜を過ごすというのが、良い雰囲気のように思えてしまう。

良多を見ていると寂しい気持ちになる。



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