蝶の眠り


 2021.3.29      自分が自分でなくなる恐怖【蝶の眠り】

                     
蝶の眠り [ 中山美穂 ]
評価:2.5

■ヒトコト感想
中山美穂が主演の作品。小説家であり大学の講師でもある涼子が遺伝性アルツハイマーに苦しむ物語だ。学生であり韓国人留学生のチャネと涼子の恋愛と、アルツハイマーの苦悩が描かれている。アルツハイマーものとしては、アルツハイマーの兆候が出始めた場面が強烈なインパクトがある。本作の場合、涼子の取り乱しっぷりと、周りに対しての激しい八つ当たりは強烈だ。

恋人のチャネは戸惑い、最終的には別れを選択する。病の進行と記憶が消えていく恐怖。涼子が小説家なので、作品を書ききるまでは。。という強い思いがある。数年後のチャネと涼子が描かれており、ある程度想定通りの展開となる。涼子の混乱は他者を激しくいらだたせる効果がある。

■ストーリー
売れっ子の女性小説家・涼子(中山美穂)は、自分が母と同じ遺伝性アルツハイマーに侵されていることを知る。死を迎える前に、何かをやり遂げようと考えた涼子は、大学で文学の講師を務めることを決める。講義の初日、学生と訪れた居酒屋でアルバイトをする韓国人の留学生チャネ(キム・ジェウク)と出会い、涼子は最後となるかもしれない小説の執筆を手伝わせることに。

愛犬の死により正気を失う涼子、そこへ駆けつけたチャネといつしか二人は年齢の差を超えて恋人のように惹かれ合っていく。病が進行するにつれ、涼子は愛と不安に苛立ちの中、チャネとの関係を清算しようと決意するのだが、その思いは到底チャネには受け入れがたいものであった。

■感想
涼子はいずれ自分がアルツハイマーになることを理解していたのだろう。涼子は常に何かをやり遂げようとしている。チャネとの出会う場面では、まだ学生と講師という関係でしかない。涼子が自身の最後の作品となるかもしれない小説の作成をチャネに手伝わせる。

最初はただのアルバイトとして犬の散歩や本の整理をやらせていたのが、いつの間にか小説の清書をやらせるまでになる。涼子とチャネの関係が次第に変化していくのが本作の見どころなのだろう。

チャネは貧乏学生としてバイト漬けの日々を送っている。それを心配する同級生の女子もいる。この同級生とチャネの関係は微妙だ。恐らく女子はチャネのことが好きなのだろう。チャネが涼子と同棲しはじめると周りはざわつきはじめる。

やはり講師と学生の恋愛はタブーなのだろう。涼子はこの時点で自分の残り時間があとわずかということに気づいている。にもかかわらずチャネを手元に置いておきたい気持ちもある。自分の記憶がなくなる恐怖は相当なものなのだろう。気づいたらヒステリックな自分がいるのは恐ろしすぎる。

涼子が混乱するシーンは強烈だ。何も知らないチャネからすると恐ろしくなるのだろう。涼子は窓に映る自分の姿を見て、知らない誰かが窓からのぞいていると叫ぶ。ここからチャネは涼子との別れを決意する。

それは正しい決断なのだろう。涼子の別れた夫がチャネに対して会いに来てくれと言うがチャネは拒否する。チャネからしたら涼子は終わった恋愛なのだろうが…。ラストで数年後のチャネが描かれている。そして、涼子と再会したチャネは…。

涼子は決してチャネのことを忘れていない、というラストだ。



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