2019.5.29 築地だからこそ出せる雰囲気【築地魚河岸三代目】
築地魚河岸三代目 /大沢たかお 田中麗奈
評価:3
■ヒトコト感想
マンガ原作らしいが、原作は未読。エリートサラリーマンが、恋人の実家である築地魚河岸の跡を継ごうとする物語だ。旬太郎がちょうど仕事に対して嫌気がさしていたタイミングもあり、魚河岸の活気ある雰囲気に飲み込まれている。素人がすぐにできる仕事ではないが、旬太郎の頑張りに周りは次第に受け入れていくのだが…。
旬太郎の物語以外に、魚河岸の仲間たちにもそれぞれの物語がある。特に恋人の家族関係が大きなポイントとなる。昔ながらの人情物語と言えなくもない。魚辰で昔から仕事をしていたエイジが実は恋人の肉親だっただとか。複雑な人間関係が相まって、最後には感動の物語となっている。強烈なインパクトはないのだが、人情物語としての面白さがある。
■ストーリー
商社に勤めるエリートサラリーマン・赤木旬太郎は、ひょんなことから恋人の実家である築地魚河岸の仲卸店「魚辰」を手伝うことになる。長年に渡り培われたしきたりの中で、ど素人の旬太郎は悪戦苦闘するばかり。しかし、様々な人々と出会い、共に働く中で、いつしかサラリーマン生活の中で忘れかけていた大切なものに気づかされていく。そこには、今風でも起用でも決してないけれど、本音で人と向き合い、助け合う本当の優しさ、温かな心のつながりがあった・・・。
■感想
エリートサラリーマンの旬太郎が魚河岸に勤務する。今までサラリーマンしかやってこなかった人間がいきなり築地の仲卸をやるなんてのは無謀だ。ただ、旬太郎の明るく前向きで頑張る姿に周りは次第に心を開いていく。
旬太郎は恋人が築地の仲卸の娘だと知り手伝おうとする。恋人の方は築地に良い思いがなく、旬太郎には近づいてほしくなかった。この葛藤が最初の二人の障害となる。そこから、恋人がなぜ築地を避けてきたかの理由が判明する。
仲卸の面々は個性豊かで良い人ばかりだ。築地のしきたりや仲卸の大将の隠し子の話など、それなりにインパクトのある展開ではある。恋人が実は仲卸のエイジと良い中なのではないかと疑う旬太郎だったのだが…。実は二人は腹違いの兄弟だった。
なんだか非常に複雑で、自分がどちらの立場であってもちょっとショックが大きい話だ。エイジは大人で、恋人の方もそれなりに考えがある。皆心のどこかにわだかまりがあっても、それを隠しながら生きているということなのだろう。
エイジはまるで映画のように、他の男と結婚しそうになっていた飲み屋の女将を華麗にかっさらっていく。そして、旬太郎は仲卸の大将に認められ、修行することが許される。見事成長した場合は、三代目として店を任せえるとまで言われてしまう。
まさに江戸っ子というべきか、心温まる人情物語がここにある。全体としてなんだか古臭く感じてしまうのは否めない。その古さも良い味をだしているのは間違いないだろう。豊洲ではこういう物語は成立しない。
築地で働く者たちの個性豊かな物語だ。
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