鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース 


 2019.4.1      鳥居が食い込んだ家の密室 【鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース】

                     
鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース [ 島田 荘司 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
タイトルどおり、鳥居を使った密室が描かれている。物語は事件というよりは、サンタクロースに絡め、誰もが入り込めない密室にサンタがプレゼントを持ってきたことを物語のミステリアスな要素のひとつとしている。家の中に鳥居の一部が入り込んでいるというのが、そもそもおかしな環境だ。それと共振を使い密室トリックとしている。

正直、ほとんど密室トリックとしての面白さはない。読んでいると、トリックが予想できてしまう。ただ、それを知りながらも、物語としてはどのような経緯でそのトリックが使われたかを楽しむべきなのだろう。御手洗シリーズなので、シリーズのファンならば楽しめるかもしれない。それ以外の純粋なミステリーファンにはつらいだろう。

■ストーリー
完全に施錠された少女の家に現れたサンタ、殺されていた母親。鳥居の亡霊、猿時計の怪。クリスマスの朝、少女は枕もとに生まれて初めてのプレゼントを見つけた。家は内側から施錠され、本物のサンタが来たとしか考えられなかったが―別の部屋で少女の母親が殺されていた。誰も入れないはずの、他に誰もいない家で。周囲で頻発する怪現象との関連は?

■感想
タイトルの世界にただひとりのサンタクロースというのがポイントなのだろう。貧しい子供にサンタクロースがやってきたと思わせてあげたい。そして、その子は成長しサンタがどうやって自分にプレゼントを届けたのかを疑問に思い、その疑問が御手洗の元にまで届く。

回りくどい話だが、そのサンタ絡みの密室から、同じ時期に起きた殺人事件の密室に関連することになる。密室の謎を解き明かすことは、別の真実を見つけ出すことにつながる。その真実が全ての人を幸せにするとは限らない。

鳥居を絡めた密室の謎はわりとシンプルだ。ただ、そもそも鳥居の一部が家の中に食い込んでいるという状況がありえない。そして、近所の人々が不眠症だとか置物が勝手に移動しているだとか、明らかにおかしな出来事が起きている。

鳥居に関連した密室というのは、早いうちから連想できる。ただ、密室を作り出す元がどこなのかは後半にならなければわからない。その後、別の男目線で密室のトリックが明かされる。鳥居を使ったトリックにより、意図的に作り上げられた密室ということだ。

少女の家にサンタが現れた。それは夢のある出来事のひとつとして良い。ただ、その後の展開は昔の物語としても、あまり良いものではない。不倫と家庭不和、そして、最終的には心中へとつながる。ひとり残された娘を親類に託す。読んでいてずいぶんと無責任な親に思えてきた。

そんな無責任な男のとばっちりを受ける形で、無実の罪で服役していた者が、御手洗の推理により解放されることになるのだが…。その男が語る、刑務所に居た方が良いという言葉が印象的だ。

ミステリーとしての面白さは少ない。



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