トリガー 下 


 2020.2.28      在日米軍を民間にアウトソースする野望 【トリガー 下】

                     
トリガー(下) /真山仁(著者)
評価:3.5
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■ヒトコト感想
キム・セリョン暗殺事件は、よりきな臭い方向へと動いていく。冴木があらゆるコネを使い調査するにつれ、日米韓を揺るがすとんでもないスキャンダルをセリョンが握っていたと知る。政治家や権力者へ、どこまで汚職が進んでいるのか。オリンピックの競技中に暗殺を実行できる組織とはどのような存在なのか。上巻では行方不明となっていたSATの隊員が何か鍵を握っているかのような流れとなっていた。

下巻ではより強烈なレベルの上位者にまで汚職がすすんでいることがわかる。冴木がすでに権力とは無関係の位置にいるだけに、あらゆる権力者と対等以上に渡り合うことができるのだろう。正義をひたすら追求する者たちが、何も恐れず突っ走ることで事件は真の解決を迎える。

■ストーリー
真実を求めて照準は揺れる!?東京五輪の馬術競技会場で起きた韓国代表キム・セリョン暗殺事件。背後には日米韓を揺るがす極秘情報が存在していた。事件の統括責任者として内閣参与に就いた元内閣情報調査室長の冴木は、北朝鮮の潜伏工作員・和仁と手を組み、真相に迫ろうとしていた。一方、セリョンのSPを務めた巡査部長の藤田は、彼女を守れなかった悔恨の思いを胸に、真犯人と、彼女が遺した“あるデータ”の行方を追っていた。すべてのカードが開かれたとき、世界は予想をはるかに超えた新しい顔を見せる――!!

■感想
下巻ではいきなり韓国側が犯人逮捕の情報が飛び交う。そして、犯人を日本の警察が護送中に犯人は自爆してしまう。これらが全て韓国側が事態を収拾させようとして作り上げたフェイクだった。日本側としても早期に解決しオリンピックを再開したいというのがある。

両国の思惑が一致したかに見えたそこでも、冴木は真実を暴き出すために動くことをやめない。ひとりの人間を暗殺者に仕立て上げ、調べられないように自爆させるなんてことがすぐできる権力構造には恐ろしさしかない。

正義に燃える日韓の検事たちは、セリョンの仇とばかりに必死に事件に食らいつく。日韓それぞれの面子や、捜査を指揮する組織の問題。そして、北の工作員の存在まで。組織間の綱引きは現場の人間たちを混乱させる。

さらには北の工作員が普通に日本の捜査機関に入り込んでいたりと、もはやどこまでが正しいのかわからない状態となっている。在日在韓米軍を民間にアウトソースするなんてことはありえない。ただ、それを実現しようと考える勢力は、それなりの力をもっているということなのだろう。

東京オリンピック開催中というのがすべてに強烈なインパクトを与えている。暗殺されたのが韓国民の希望であり韓国大統領の姪となると、それだけで強烈な外交問題となる可能性がある。内々ですべてを収めるパターンもあるのだろう。

それでも、誰かしらが責任をとるために辞任したりもする。世間で急に政治家の誰かが辞任したとなると、表にでない事件の幕引きのために責任をとったのだと勘繰らずにはいられない。本作ほどミステリアスではないにせよ、巨大権力による横暴というのはありえないくはない。

一般国民は何も真実を知らされない可能性は高い。



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