2021.11.12 コロナ渦を経験する作者 【東京ディストピア日記】
東京ディストピア日記 [ 桜庭一樹 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
桜庭一樹がコロナ渦での暮らしをつづる。ちょうど2020年の1月から2021年の1月までの日常が描かれている。基本的には知っているニュースがメインに語られているが、作家という職業柄と、作者独特の感性で語られる部分がある。一番衝撃的なのは、世間が陰鬱となった時期に人々のストレスが溜まっているため、様々な妨害行為を作者が受けていたということだ。
女性は弱い立場だからなのだろうか。道端などで攻撃されるというのが頻繁にあることに驚いた。そして、それをインタビューで指摘した担当者に対しても、気づかないことの弊害を語っている。弱者が被害を受けていることを知らないことについても、分断として語っている。コロナ云々よりも、その部分が衝撃的であった。
■ストーリー
作家・桜庭一樹が記録するコロナ禍の東京・2020年1月~2021年1月。分断が進むこの世界で、私は、あなたは、どこにいて何を思考する、誰なんだろう――?
■感想
コロナの状況をどう感じたのか。行きつけのカフェやホテルのラウンジでテレワークする会社員が増えただとか、店が自粛して休業状態にあるだとか。作者の身近でどのようなことが起きていたのか。割とどこでも同じ状況だというのがわかる。
直接的な仕事への影響がどのくらいあるのかは不明だが、作者が日々のコロナ関連のニュースを語り、日常を語る。日本全体が疲弊しているような雰囲気を感じることができる。自分的に気づかなかった部分を作者として気づくことが多数あるというのがよくわかった。
驚きなのは、作者の周辺で起きたことだ。女性ということで、世間的には弱者にあたり、異常な出来事に出会うこともあるのだろう。コロナ渦ということで、みながピリピリしストレスが溜まっているのか、歩いていると嫌がらせを受けたりするらしい。
自分の中ではそのような経験がないため驚いた。そして、自分のように共感できない人についても語っている。社会的な弱者が叫ぶ言葉を、「そんなことあるわけない」と否定するのは確実に分断がすすんでいるということらしい。
誰もが苦しむこの世界で、コロナのワクチンがまだ十分いきわたっていない。そして、世間はコロナの脅威を気にしなくなっている。自分としてもあまり影響は受けていないと思っている。作者の立場からするとエンターティメント系なので、少なからず影響をうけているはずだ。
タイトルがディストピアとついているので、ポジティブな感情は生まれないのだろう。本作を何年後かに読んだら、コロナのピリピリした感覚を思い出すことができるかもしれない。
何年後かには「ああ、こんなことあったなぁ」というレベルで思い出せる時がくるのだろうか。
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