2020.10.30 宣教師を棄教させることの衝撃【沈黙 サイレンス】
沈黙 サイレンス/アンドリュー・ガーフィールド
評価:3.5
■ヒトコト感想
キリシタン弾圧を描いた物語。宣教師たちが日本にやってきて、日本で弾圧を受ける。自らを犠牲として死ぬことは許されない。殉教者としてあがめられることを避けるため、大名は宣教師に棄教を迫る。かなり強烈な物語だ。キリシタン弾圧は歴史の知識として知ってはいたが、ここまで激しいものとは思わなかった。
隠れキリシタンの者たちは踏み絵を拒否し殺されていく。宣教師は、農民を殺す前に自分を殺せと迫るが、大名は決して宣教師を殺そうとはしない。宣教師をキリスト教から仏教に転ばせることで、信者たちへの絶望感を狙っていたのだろうか。本作が実在の人物をもとに描かれていることに衝撃を受けた。恐ろしい拷問の数々はすさまじいが、棄教を迫る大名の巧妙な策略がすさまじい。
■ストーリー
17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の日本。高名な宣教師の棄教を聞き、その弟子のロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)らは長崎へと潜入する。彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、弾圧を逃れた"隠れキリシタン"と呼ばれる日本人らと出会う。しかしキチジロー(窪塚洋介)の裏切りにより、遂にロドリゴらも囚われの身となり棄教を迫られる。守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは―
■感想
キリシタンへの弾圧を激しくする大名たち。序盤は、隠れキリシタンと日本へ布教活動を活発にする宣教師たちの物語となっている。長崎の小さな島にたどり着いた宣教師が、隠れて布教活動を続ける。キリシタンたちは、宣教師を見てさらに信仰心を強くする。
キリシタンは宣教師をまるで神のようにあがめる。他の島へ宣教師たちが移動しようとすると、自分たちの元にいてくれと懇願する。はたから見ると、なぜキリシタンたちがここまで信仰心を強くするのかがよくわからない。
隠れキリシタンとしての活動は大名の厳しい取り締まりにより捕らえられていく。踏み絵を乗り越えたとしても、十字架に唾を吐きつけることはできない。命がかかっているのならば、キチジローのようにその場限りで踏み絵を踏み、十字架に唾を吐きかければよいのでは?と思わずにはいられない。
宣教師でさえも、踏み絵を踏めと信者たちにアドバイスしたりもする。宣教師たちが一番心を痛めるのは、信者たちが殺されること。宣教師自身は殉教者になることを求めているようにすら思えてしまう。
大名は宣教師を殺すことはない。殉教者にさせないために、宣教師を棄教させることに心血を注ぐ。宣教師が棄教することは死よりも苦しいことのように伝わってきた。尊敬していた師が日本名を持ち、寺院の中で着物を着てキリスト教を非難するような文章を書くのを目の前で見せられると、心が折れるのだろう。
それまでの信者たちの死や苦しい拷問を目の前で見せられていると、最後に宣教師の心がぽっきりと折れるシーンは、全てが崩れ落ちるような絶望感が伝わってきた。
本作が実話をもとにしていることに驚いた。
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